この手の歴史超大作映画の評価基準がサッパリ解らない アレキサンダー

アレキサンダー プレミアム・エディション [DVD]

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対『ヒストリエ』で視聴。エウメネスは出てこない(泣)。それがなくても、オペラ座の怪人→ジョエル・シューマッカー→フォーンブース→コリン・ファレルとか、24→キーファ・サザーランド→フォーン・ブース(以下略)とか、ツール・ド・フランス→ボ〜ネン♪→アレキサンダー、てな感じで確実に見ることになっていた縁のある作品。この手の映画では、『タイムライン』と『アレキサンダー』が◎まで行かなくとも○で可、『トロイ』と『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』が×不可ということで、なんていうか世論と反対を行ってしまっている。つまり、あれだけ酷評されている割には、それなりに面白かった。
まず、戦闘シーンが中々良い。トロイの木馬を実際に映像化するとこんなにもダサいのかと思い知らされたTroy、意味不明戦闘シーンで苛々させられっぱなしのLOTL2作に対して、アレキサンダーは騎馬戦なのでかなり面白い。もちろん中国の武侠映画みたいな派手さ、ありえなさがある訳でもなく、合戦のわけわかんなさ、ごちゃごちゃ感が面白いんだ。といってもそれは『ガウガメラの戦い』で終わっちゃって、それから東方にいけば行くほど画面からひたすら漂うのは違和感。東方遠征って口では簡単に言っちゃうけど、山岳部隊からスキタイ民族からインドまで特に理由も無く行っちゃうアレキサンダーに、視聴者も彼の臣下もお怒り気味。一応、彼を東に向かわせる理由は「母の抑圧」「父への憧れ」「神話の実現」と三本柱であるんだけど、アレキサンダー君が母・父それぞれにものっすごいアンビバレントな感情を抱えている上に、神話もエディプスとかアポロンとかヘラクレスとか5個くらい引用されちゃってて頭の中が大パンク。多分それが「エンターテイメント的ではなく心理的」とかさ、「アレキサンダーが東方遠征した理由がわかんない」とか言われちゃう理由だと思うよ。まぁ、実際そんなもんなんじゃないの?って思うけど。しっかし、なんで映画を一回見ただけで理解できるだけの脳を自分は持っていると、世の人は思い込んでいるフシがあるんだろう?
そんな人物描写の解りにくさはあったとしても、役者陣はいい。やっぱりコリン・ファレルはすぐ泣きそうになって母性本能くすぐるし、ジャレット・レト扮するヘファイスティオンとの会話はジーンとくる。アレキサンダーの家庭はモロにフロイトの言うホモセクシュアルを生み出す構図が揃ってるので(当該の学説は非科学的だが、確かにTG志向者の共通点として一理あるとも思う)、「その通りだー!いけー!やれー!男同士の愛こそ本物だー!産むな孕むなー!」とか思ってみていたりしていた。自分にやおい属性が無いのが自分で不思議である。

Alexander: It is you I love, Hephaistion. No other.(ヘファイスティオンヘファイスティオン、愛しているのはお前だけ、他の誰でもない)
Hephaistion: You're everything I care for and by the sweet breath of Aphrodite I'm so jealous of losing you to this world you want so badly.(君は僕の心のすべて、そしてアフロディーテの甘い吐息が僕を嫉妬に駆り立てる、君がそんなに世界を欲しがることで僕が君を失いゆくのを)
Alexander: You'll never lose me Hephaistion. I'll be with you always till the end(ヘファイスティオン、君は僕を失ったりしない、最後まで君と共にいる)

みたいなド臭いセリフをこの2人が繰り広げまくるので萌えないわけがありません。ぶっちゃけ私はジャレッド・レトリンジー・ローハンの今カレでキャメロン・ディアスの元カレくらいの認識しかなかったのですが(17歳のカルテだけは見たんだけど認識せず)、これで大ショックを受けました。多分ブロークバック・マウンテンジェイク・ギレンホールでも同じことが起こるんだろうな。ただ、アンジェリーナ・ジョリーは、年齢がさっぱり合っていないし、女の怨念的なものをあんまり感じなかった。いつも綺麗で。
最後に、各地で見せるアジア女性のダンスがいいね。って、アジア舞踊に詳しくない私は、もしかしたら偏見入り混じりまくりのものを、見分けられないだけかも知れないんだけど……でも、綺麗だったよ。旅先での愉しみといったら女くらいしかないんだけど、それを舞踊で表現するとかいうのに私は弱いんだな。
もちろん、批判すべき点はいくらでもあるんだけどね。でも、結構面白かったよ。
アレキサンダーなのかアレクサンドロス大王なのかアレクザンダー(と発音しているように聞こえた)なのかわかんなかった一本。