エルサがレズビアンであっても受け入れなくてはならない三つの理由
2年ぶりの更新がまたアナと雪の女王の話かよ!
こんにちは。岩瀬坪野です。アナと雪の女王記事4連チャン。アナと雪の女王は4ヶ国語で見てます。日本語版見たことないけど。
最近また日記を書きたいな〜と思っていて、いろいろ準備しているので、ウォームアップということで!
別にエルサがレズビアンでもいいじゃない!!!
何が悪いのさっ!
と思う理由を三つ書きます。
1、ミュージカルに、最後のどんでん返しと続編のアレさはつきもの
ミュージカルは多くの場合、マイノリティに焦点を当てており、そのことで観客の共感を呼び込んでいます。
逆に言えば、私たちも結局は、どこかでマイノリティだからこそ、共感をしてしまい、ミュージカルを愛してしまうのかもしれません。
エルサを同性愛者に、という人は、そのような業界で、すなわちブロードウェイにて育ったロバート・ロペスとクリステン・アンダーソン=ロペスをディズニーが買ったにもかかわらず、ディズニーが上澄みばかりを利用してはっきりと物言いをしない(させない)ことに苛立ちを感じているのかもしれません。
だってその2人の過去作品は、アナと雪の女王に勝るとも劣らない大傑作『アベニューQ』、『ブック・オブ・モルモン』ですからね。
そしてその両作品にて、言ってはいけないことを言うというスタイルを確立。インターネットはポルノのため。モルモン教に入れば女子割礼しなくてOKだからあなたの○○○○○は無事。しかしアナと雪の女王では、「Fixer Upper(邦題:愛がすべて でしたっけ?)」でしか発揮する機会がなく、観客にそれぞれのキャラクターのFixer Upperな部分を探せというスタイル。Fixer Upperに描かれていたクリストフのダメなところと同じくらい、各キャラにもダメなところがあるんですよ。*1
であれば、エルサのそれが、彼女と対等に渡り合える、同等に強い伴侶だと読み解く人がいたとしても仕方がないわけです。
ちなみに、ロペス夫妻の過去作品には、最後にカムアウトするキャラクターもいますし、世界で一番ロングランしているミュージカル「オペラ座の怪人」は、続編「Love Never Dies」により前編に描写されなかった衝撃の事実があったことが明らかになっています。それにより無色透明な美しい思い出に、油絵の具がバッタバッタ塗られるような感覚があるのは事実ですが、そこから「Till I Hear You Sing」という名曲及びラミン・カリムルーというスターが生まれたことを考えれば、総じて得るものはあったと言ってよいでしょう。少なくとも、ディズニーの各続編よりはよくできています。
私は、結局のところアナと雪の女王を、とてもよくできたブロードウェイのチラシだと思っているので、少しでも若いマイノリティの人がブロードウェイに気づくきっかけになればいいと思っていますが、チラシ=ディズニー自体の力が強すぎて、ディズニーに、いい加減同性愛者のこと「いないもの扱い」すんのやめろや!と言いたくなるのはわかりますし、ありとあらゆる機会にそれを主張していくべきだと思います。それにエルサがふさわしいキャラクターなのかわよくわかりませんが、少なくともニュースになって私が日記を2年ぶりに書くくらいの効果はありますし、ましてや声優が、モーリンでエルファバなイディナ・メンゼルですしね。ブロードウェイを利用しているディズニーを利用して何が悪いのさ?
いずれディズニーが、かつて黒人プリンセスや、見た目の麗しくない人物を主人公に据えたように、いつかは同性愛者を、できれば主人公格で扱うことを、アライの一人として願います。
2、ジェンダーに縛られたアナと雪の女王批評はもうやめよう
「『アナと雪の女王』ジェンダーだけじゃない!アナ雪革命を徹底解剖!」]で何度も記したように、 『アナと雪の女王』は脱プリンス依存の物語ではなく、「一人で自由になりたい」と中盤にて自分の意思にて選択するところや、言うことをハイハイと聞いてくれるYesマンのハンスではなく、ちゃんとNoと言えて、意見がぶつかり合うクリストフのような男を選択するという対比(そうすると男はプリンセス化し、プリンセスは男化するのだが)というところが新しいと思っているので、エルサの選択自体は、アラジンの焼き直しという感じで、重きを置いていません。
エルサにもアラジンにも、がっつり感情移入できます。
3、結局お互い「アナと雪の女王に俺が言いたいことをいかに乗せるか」の言い合いでしかない
っていうかな、お前ら全員、前にも言ったけど、
「アナと雪の女王が何を描いているか」ではなく、「アナと雪の女王に俺が言いたいことをいかに乗せるか」に集中しすぎなんですよっ!!
とはいえこういった議論は、私がNo⇔Noの関係といった、建設的なアナとクリストフの関係に似ておりますので、極めて肯定すべきことです。
それを解きほぐそうとした試みが、「『アナと雪の女王』ジェンダーだけじゃない!アナ雪革命を徹底解剖!」]で、クリス・バック監督、ジェニファー・リー監督、シェーン・モリスは構造的にも素晴らしい脚本を書くため、おそらくエルサがレズビアンであった場合にも、大変納得いく形態に持ってこられることは間違いありません。
私の中では、「一人で自由になりたい」という部分が新しかったFrozenですので、前作の最後に「一人で」の部分がすでに美しく否定されてしまいました。しかし私は幸福です。ですから、仮にエルサにパートナーができたとしても、その人がまた同様に一人と自由を愛する人であり、自らの束縛欲や、周囲からの反対(相手の地位でも性別でもなんでもいいです)によって、自由の形を、自らの力の発露を、異端としてのあり方を変えられるような局面に立たされ、葛藤し、乗り越えてくれれば、その原因が何でも問題ありません。
この件に関しては、そのような事情から、エルサがレズビアンになると、私自身は、Love Never Diesで感じたような「美しい前作の思い出に色がついてしまった…」感を感じることは必至ですが、ヴォルテールのいう「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」の立場を貫きたいと思います。なぜならディズニーこそブロードウェイの利用者だから。そして私たちもアナと雪の女王を利用しているだけだから。何はともあれ、意見を表明するのに萎縮ダメ、絶対!
なおこの記事はひとりのアナ雪ファンが #GiveElsaAGirlFriend に反対する理由 - Tokyo Pin Trading Daysに触発して書かれましたが、「製作者の手の中にある内からそれを歪めるような圧力をかけないで欲しい」と言われましても、どうせ大した圧力にならないし、それで変えて作品が失敗したら製作者の力不足だと思いますし、歪めるとか言葉の使い方がやな感じですし、正直私の気に食わない意見を目に触れるところに掲出される形で主張しないで欲しいという風にしか読めませんでした。すいません。
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論者紹介:岩瀬
年に1度はウェストエンド・ブロードウェイに舞台を見に行く舞台好き。そのきっかけはディズニー。好きなミュージカルは、オペラ座の怪人、ビリー・エリオット、Avenue Q、RENT、Wicked、レ・ミゼラブル。
Twitterやってます。 https://twitter.com/IwaseTsubono
*1:アナのノーコンなどは何度も描かれてます http://d.hatena.ne.jp/lepantoh/20140712#1405174377