BANANA MESHですね 『ナッシング・ハート』『あるはずのない海Ⅰ・Ⅱ』

だからまだ死んでないってw

パーム (1) ナッシング・ハート (ウィングス文庫)パーム (2) あるはずのない海 (1) (ウィングス・コミック文庫)パーム (3) あるはずのない海 (2) (ウィングス・コミック文庫)がブクオフで105円。ごちそうさま。
ここ数日は「似ているなァシリーズ」を取り上げることになりそうです。私は許容量以上の漫画を読むと、細部への感動が薄らぎ漫画を要素の集合体として読み出してしまうという性能を持っていることは過去も書きましたが、今その状態かも知れません(笑)。それを自覚しつつもなお書くのは幸福だからです。こんなくだらないことで幸福になれることが幸福です。きっとその為だけに意味のない人生を生きているっぽい。
さて本題に移りましょう。大好きなレヴィ・ディブラン(いい加減キーワード化した方が良いかしらん)が世界一の魔法使いである人王アークに「殺すぞ」宣言されたので、焦って単行本派から雑誌派に移行。今まで13本くらい死亡フラグは立っていたので、殺すぞ宣言で何故かホッとした自分がいます。って、だめじゃん!死なないで!
さて、獣木野生(けものぎやせい)、元・伸たまき(しんたまき)という、へんてこな名前の作家がかれこれ20年掛けて描いているという「パームシリーズ」(PALMとも描く)は、そういった経過で入手した月刊Wingsに載っていたのですが、その設定が『BANANA FISH』とダダかぶりだったため、研究のため渋々入手した、というのが真相です。
でも、思ったよりずっと面白かった(笑)。
線が、柴田亜美が描くように太くて均一なんだけど、(今では崩れている)デッサンが初期は健在。アメリカ人ってまず近づいたときに「デカッ」って思うんだけど、そういうデカさ――身長とか体格、胸周りの感じ――が良く出てて、BANANA FISHやメッシュとはそこが決定的に違う。おまけにアメ人特有のジェスチャーな感じも良く描けていて、思わずコワがってしまった*1
と、言っといてなんだけども、やっぱり金髪碧眼で名前を二つ持つ男がマフィアとドンパチして〜ってなったら、やっぱりこれは、私にとって反抗対象としての父――マフィアのボスを殺せ!『メッシュ』と『BANANA FISH』以外の何でもないってのも本音。しかも、今本誌では1人目のボス=養父を殺そうとしてらっしゃるし、作品がはじまってすぐジェームス・ブライアンが2番目のボスの耳を飛ばすところには『メッシュ』のデジャブたっぷり。連載開始も84年なので、いわゆる「メッシュ以降」の作品群の中で一番乗りの『ワン・ゼロ』と同じくらいか。ちなみに、『メッシュ』での父親との対決は80年。もちろん、相違点の方が多くあるんだけど、このテーマに関して言えば、父親は決して本当の父親である必要はなくって、むしろその存在を乗っ取った何かであることが重要なんだ。だって、それが「役割」ってことを演出するわけだからね。だから、アッシュの場合のゴルツィネは本当の父ではないし(作中で無理矢理養子縁組される)、メッシュの場合それは対・母親の文脈で起こるから、父の再婚相手エーメとの対立上に母マルセリーナがいるでしょう。
そんな風にも読めるパームシリーズだけども、決定的なのはアンディとカーターの存在。肌が黒い男主人公を描いた少女漫画なんて、ロマと白人のハーフセルジュを描いた『風と木の詩』、紫苑&印日ハーフの笠間君がいる『僕の地球を守って』、アッサム『紅茶王子』くらいしか知らないから、私としては大満足。ジェームズ−アンディの相互依存補完関係がとっても少女漫画な感じで素敵。そして、明日書く事に関係してくるけども、恋愛漫画的には別に必要ないカーターが彼らの世界を広げてくれてる。主人公ジェームズ・ブライアンは恐ろしいまでのポーカー・フェイスなんだけども、たまに嫌味を言ったとしてもそれは機知に富み、基本的には優しくて、ジョークも言って、人とのコミュニケーションをそれなりに試みてて、おまけに比類なきオプティミストというのはとっても意外だ。――この人は自分が牢獄に入れられていても、格子から吹く風に幸福を見出せるような人だろうよ。そんなキャラクターたちに、オーバーでない自然な言葉回しが、この漫画を「主人公がクドクドネチネチしてる純文学系漫画」ではなくって、サラリとクールなハードボイルド大河にしている。それに、母親的存在はいまんとこ不在みたいだ。結局私の拙稿の論旨は、「父との対立に主眼を置いていると、ボヤボヤしてるあいだに〈母〉に取り込まれて殺されるぞ!」というものなのだから、これは新しいというべきだろう。
 
最後に、タイトルについても触れておこう。パームシリーズとしてではあっても、別々の名前で刊行されている各シリーズ。英語で副題がついているのだが、それがどうもしっくりこなくて困っていた。まず、ナッシング・ハートはNothing Hurts、つまりナッシング・ハーツにするべきではないかという疑問(3単元ってヤツ)。そしてあるはずのない海はThe Sea Shouldn't Existとなっているが、これは語感の問題で、The Sea That Should't Existとした方が自分の好みであった。コレに関しては、2番目は、キングダムハーツの「存在しない世界」ってのもThe World That Never Was(かぁっこいい♪)だったので間違いではないだろう。1番目に関しては自分の完全な間違いであったのだが、面白いので記しておこう。これは、元々は"Everything was beautiful and nothing hurt"という文から取られていて、作中では「愛は何度でも生まれ変わり、決して傷つかないんだよ」という文脈で使われている。となると、Nothing hurts (the) love、という使い方になるわけだが、そうすると何故タイトルにloveが入っていないのか、他動詞を途中で止めるなどという格好悪いことになったのかが疑問になった。中学校で習うように、hurtとかinjureという単語は他動詞で、I get hurtとかI get injuredと受身にして使う*2。何故だ……?こんな馬鹿馬鹿しいことを私は3日間も考えていた。そして気がついた。「そうか!ナッシングだからハートなんだ!」――何て事はない、something coldと同じだ。ここでのhurtは動詞の過去分詞形を形容詞的に使っているだけのことだったんだ。私はセンター英語もボロボロだったし、大1のとき英語の単位を落としたというのを再認識した(笑)。だから自慢するけど、ダディ、あたし英語話せるようになったよ!……多分。
何かと獣木風のエスプリが利いてるwikipedia獣木野生を参考にしました。キャラ詳しいな。スターシステムを取ってる作家を読むのは手塚治虫黒田硫黄に続いて3人目。

*1:私は過剰にAmericanな人に未だにたじろいでしまうのだ。フレンドリーで素晴らしいことなんだけどね。ちなみに、自分では脱したいんだけど、経験ゆえか無意識に人種差別をしてしまうことはたっぷり自覚中。具体的には、バレエのプリマが東洋人だと萎えてしまったりする最低の女です。ごめんなさい。治したいんだけどこればっかりは。

*2:amでもいいんだけど、getの方が「今なった」感があるので

近況

更新が遅れてごめんなさい。毎日更新は出来なかったけど、今15日早朝、この日付を埋めようと頑張っています。この日は朝レポート、昼英語スピーチという日なんですが、案の定ギリギリまで行動せずかなり崖っぷちでした。特に英語スピーチは授業の5分前に原稿が完成したという(笑)。英語は日本語に比べ自由度が70%くらい落ちるので大変なんですが、全く緊張せず手も震えず出来ました。良かった……。
さて、溜まった映画感想や本感想は殆ど書いたので、今年既に34冊も買っている漫画について書いていきますね。そして、この日に『ユリイカ』『論座』も買ってしまい、漫画関係書籍は36冊に……。1月が31日あり、1日は家に引きこもっていたことを考えるとつまり、私は2〜13日の間に一日3冊ペースで漫画を買っていたことになります。ハハ……。しかし、残念なことに私は「古いタイプ」の漫画読みで、伊藤剛さんの表現論を追っているつもりはないんですが、なんかついつい買ってしまいました。対談なんかで、大塚英志についても触れられていて、私は大塚英志荷宮和子の二人とは全く気があわないのですが、少なくとも大塚さんに関しては同族嫌悪って奴かな?なんて思いました。私も読みに個人のバイアスがかかってしまうことは自覚しているので。そして自分の個人的問題の解決のために、もっと格好悪い言い方をすれば自己の救済のために漫画を読んでいるんでしょう。あ、ニミタンはただ単に嫌いです。