漫画

東京都青少年健全育成条例改正案に対する私のコメント

私のコメントなど大して重要ではないと思いますし、そもそも漫画を評論するという、大事なことからもう何年も遠ざかってしまった私が無責任に、今更ぶって偉そうな事を言うつもりはありません。しかし、都知事の同性愛へのヘイト・スピーチをきっかけに、あ…

追悼・佐藤史生、驚異の反逆者、輝ける頭脳をもった詩人

好意的な四流批評家やコラムニストのうちで、ただの一人だって、シーモアの本当の姿を見てくれた者はいなかった。彼は詩人なんだ。本物のの詩人なんだ。たとえ一行も詩を書かないにしても、その気になれば、耳の裏の形一つででも、パッと言いたいことを伝え…

なぜコムギは盲目なのか

好きなことについて書こう、と思う。 日記を再開させると下手に宣言してから数週間、わたしは多くの機会を得ながら自分に言い訳を続け、けっきょくただの一文字だって書かなかった。私は心の中ではいっぱしの評論家のつもりだったが、3年の歳月が私を平凡で…

2008年漫画ベスト5

5位 完結おめでとうございます 高尾滋『ゴールデン・デイズ』 何者にも支配されない高潔な魂を持つものは、幸福にすら己を屈服させることを許さない――そんな美しく哀しい生き物をしあわせにするには、どうすれば良いのだろうか? というものすごいテーマを持…

他人を救えない仏教の物語――手塚治虫『ブッダ』

人生いろいろあって、こころに悩みを抱え、仏教に走る岩瀬。クリスマスに仏教の話題を更新するというのも私らしいではないか。さて、私は佐藤史生『ワン・ゼロ』と水樹和佳子『イティハーサ』の熱狂的なファンだし、この2作品の要点はよーするに「汚れて穢…

今年のジャンプについて語るか

いい歳してやっぱりジャンプ読んでいます(にっきをはじめたときは10代だったのにおかしいな!)。 月曜は早く帰れるとウキウキ。ジャンプを読みつくしてしまうので時間がなくてたいした日記がかけないので、ジャンプそのものをネタににすることにしました(…

『マージナル』都市編は失敗作だ

劇団Studio Lifeの『マージナル』を、砂漠編、都市編の順で見た。 当該劇団の作品は、少女漫画を題材としたものが多く、私もこの間の『カリフォルニア物語』とか『トーマの心臓』とかをちょくちょく見に行ったりしていた。 『カリフォルニア物語』は原作がと…

最近読んでいる漫画『金色のガッシュ!』15巻まで、あと「イブニング」

金色のガッシュ!! (15) (少年サンデーコミックス)作者: 雷句誠出版社/メーカー: 小学館発売日: 2004/03/18メディア: コミック クリック: 6回この商品を含むブログ (14件) を見る『金色のガッシュ!』、19巻にくる泣きポイントとやらまで、なんとなく読んでい…

「鈴木先生」の周辺がきな臭いのは何故か――鈴木先生のえこひいきについて

自分でもどこで読んだのか忘れたけれど、ちょっとした話題になっている「鈴木先生」を購入してみました。私の知る限り、「鈴木先生」について触れた文章はほぼ絶賛ばかり。「文芸漫画という、今は亡き路線を走ろうとする作者と作品の態度」、そして「教育の…

最近読んでいる漫画『HUNTER×HUNTER』、『学校ホテル』、『金色のガッシュ!』

……久しぶりの土日休みです。ほんと。ああ草臥れた。 ■少年ジャンプとハンタ再開 昔は秘密裏に読んでいましたが、社会人になってから読んでいることを公言、しかも堂々と買うようになりました。帰るのが遅いとぼっとしているだけですぐ就寝時間になってしまう…

本日、猊下記念日につき

こんなところを見に来てくださる皆様は死に掛け日記マニアさまですか。 かつてない惨状になっておりますが、本日のみは更新しなくてはならないだろうと思い立ち、キーボードを叩いておる次第です。 まず、率直に言えばわたしは活動の場所をどこかに移したり…

同人誌はなんで「パロディ」として語られないのか、とか(高橋×望月感想)

さて、わたしは文学生でありつつもここでは漫画研究のひと、という位置づけなので、漫画の話も交えつつ、昨日書ききれなかった感想を書く。拝聴して、高橋さんと望月さんは、すれ違ってはいなくとも、立ち位置が全く逆だと感じた。そして私は望月さんのいる…

勝手な思い込みによるBLと少年愛の違い

の、ひとつ。 あいかわらず『ゴールデン・デイズ』がそれはそれは素晴らしい。だってわたし多分読みながら震えていたんじゃない。うわあ気持ち悪い……。 よくわからないけど私の勝手な思い込みだけど思い込みだって断れば開陳してもいいわよね? なんとなくBL…

『隠喩としての少年愛』は“珍しく”批評精神溢れる少年愛/やおい考

誉めることにしよう。 なかなか信じてもらえないのだけど、わたしは目にしたものは大抵誉める主義なのだ。普段は「魔界のいい人」になるべく人の傷口を嬉々としてえぐり、好んで再起不能にしようと心がけているだけで……。隠喩としての少年愛―女性の少年愛嗜…

買い与えてでも読んで欲しいと思う漫画ベスト10

こんばんは、長らく更新していないのに見に来てくれてありがとう。 さて、去年もやったんですが、今年読んだ漫画ベスト10を発表したいと思います。ルールは以下のとおりです。 2006年に最新刊が発売されたもの、および連載されたもの。 指標として得点をつけ…

よくわからない

更新が滞っていてすみません。年末には今年の面白かった漫画などを特集したいと思いますので、少々お待ちください。 さて、よくもわるくもよくわからない、と思った文章があったので自分メモ。 負け組日記 - 「女の子ばっか被害者かよ」「醜い女装の子」 リ…

改臓肢儀のラストが好きすぎたので書いとこう 『無限の住人』20巻

なんだか普通のレビューをするのは久々。ほうぼうから散々な評価の「不死力解明編」が漸く終ったとのこと。久々にバトルがあったんだけども、闘い合っている人々の間に関係性が薄い(共闘している人が元・敵だけども、殲滅すべき相手はキャラが弱かった)た…

サントリー学芸賞を旧世代的な竹内一郎『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』が受賞してしまったことの意味

流れ用つ キーワード「竹内一郎」を含む新着エントリー えーっと、実は私はこの件にコメントできるほどの知識を持っていないのですが……まあちょっとしたインフォーム、とお考えください。というかむしろ、最近の表現論の盛り上がりに「きいい〜」と嫉妬した…

大塚英志Disの論理展開が大混乱している件

流れが良くわかんない人用つ タグ:大塚英志を含む注目エントリー いちおうコメントしときゅ。とにかく恐ろしく言葉が通らない状況になっているモヨンで、何でかって言うと言語を共有してないからだなこれ。 ちょっと待った、と思っているのは今だに〈内面〉…

〈内面〉論のメチャクチャな発生にみる、大塚英志の論理的欠陥

たまたま吉本隆明『マス・イメージ論』が手元にあるので、大塚英志が割と近年の彼の総括である『「おたく」の精神史 一九八〇年代論』や『教養としての〈まんが・アニメ〉 講談社現代新書』などで少女漫画の通史を作成する際に用いる〈内面〉モデルの成立に…

吉野朔実『エキセントリクス』巻末解説における黒田硫黄と守中高明の「絶望的なまでのすれ違いという相似」は何故起こったのか、『少年は荒野をめざす』『ジュリエットの卵』を引きながら考える、そして『恋愛的瞬間』と少女漫画について(メモ)

少女漫画評論界において「多様である」もしくは「多数である」ということの価値を認める動きが盛んであることは、そして私もその波に半ば自覚的に乗って少女漫画礼賛を続けてきたことは、この日記を読んでいる人なら察しているかもしれない。察していなくて…

これぞトキメン漫画の教科書 やっぱり面白い『スキップ・ビート!』14巻

関係ないですけど、今、日記の更新なんてどうでもいい位に頭がぶっとんでしまっていて、箸が転がっても面白いという、自分の中ではわりと理想の状態にあるので、実はあんまり漫画を必要としていなくて、あまり買っていません。ただ、『スキップ・ビート!』…

ジュリエットの卵めも

ジュリエットの卵 (3) (小学館文庫)作者: 吉野朔実出版社/メーカー: 小学館発売日: 2001/02/01メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 1回この商品を含むブログ (4件) を見る帰ったら手直しするめも。壮絶な脱出失敗を描く作品。さくひんとしてしっぱいなわけで…

男の子が女の子にトキメキまくる少女漫画の潮流「トキメン」を探れ!

自己紹介 lepantoh(以下lep):名前が二つある人は、魂が二つあると言います。そこで今日は対談形式で、岩瀬坪野さんとのインタビュー形式で話を進めていきたいと思います。 岩瀬(以下岩):こんばんは「夢見る学生」岩瀬です。好きな名前が2つあるキャラ…

魔人探偵脳噛ネウロ8巻に掲載されたネタまとめ

表紙は逢沢綾(アヤ・エイジア)。私事ですが、この巻収録分から、全部リアルタイムで読んでいました。こうやってみると今回の巻ってつなぎの巻なのかなぁって思います。というか、前の巻で8・9巻収録分や人気投票にも絡めて祝・7カァン! それでも『魔人探偵…

あたしにとっては、つまんなくなったわ 『君に届け』2巻 椎名軽穂

って、思わずオネエ言葉になっちゃうくらい、いやぁ、若い子っていいわねハイハイって感じ。ネットのレビュワーさんがこれからどういう評価をするのかはわからないけれど、わたしにとってはなんだか本当に拍子抜けだったわ。いちおう、新生別マの代表作にな…

高慢であること 高尾滋『てるてる×少年』−『ゴールデン・デイズ』に絡めて

てるてる×少年 第11巻 (花とゆめCOMICS)作者: 高尾滋出版社/メーカー: 白泉社発売日: 2005/04/19メディア: コミック購入: 2人 クリック: 14回この商品を含むブログ (32件) を見る『ゴールデン・デイズ』があまりに素晴らしいので、最初の方で止まっていた『…

語る言葉を持たない 7 SEEDS(9)

ネタバレたぶんなし。 つらい。苦しい。切ない。だけどごめん、不謹慎だけど、漫画としては最高に面白い。好き。誉める。7SEEDS 9 (フラワーコミックスアルファ)作者: 田村由美出版社/メーカー: 小学館発売日: 2006/09/26メディア: コミック クリック: 2回こ…

一威の寂し笑いをモリエ笑顔と名付けたい−モリエサトシ『猫の街の子』レビュー

私の好きなモリエサトシ!を書いて以来案の定Google先生も御贔屓にしてくださっています(5番目)。はてなだからか、何故かけっこう検索上位に表示されるんですよね。モリエさんの記事に関してはそれを睨んで書きました。 さて、大きさも変わって月間になっ…

上野千鶴子氏による「少年愛」の読解(3) 少年はフェミニズムのために生まれたのではない

さて、最終日、いよいよ本題でございます。昨日分では上野氏のジェンダー用語の不安定性を指摘しつつも、その内容そのものは全否定しないという態度をとりましたが、今日は少し手厳しくいきたいと思います。 少女漫画における少年愛の読解が足りず、少年愛作…