あたしにとっては、つまんなくなったわ 『君に届け』2巻 椎名軽穂

湖畔の

って、思わずオネエ言葉になっちゃうくらい、いやぁ、若い子っていいわねハイハイって感じ。ネットのレビュワーさんがこれからどういう評価をするのかはわからないけれど、わたしにとってはなんだか本当に拍子抜けだったわ。いちおう、新生別マの代表作になるんでしょうけども(このポップな表紙、帯!)、オシャレ女の子の携帯する本って感じ。この間、ネットで見かけた『美人画報』をベタにモチベーションアップ&参考本として読んでいる人の新鮮さに驚いたのだけども、同種の胡散臭さを感じるわ。そう、ありもしなかった高校時代の思い出追体験用に使えそうな感じ。

君に届け 2 (マーガレットコミックス)

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むしろ今巻、爽子が完璧超人に見えるわよ。何なのこれは。
だってこの子の欠点って何なのよ。周りに誤解されているがゆえにちょっとマイナス思考で、あと引っ込み思案なくらいしか見当たらないわ。別にあたしは抱きつかれたら獣に変身しろだとか、ちょっとしたことですぐに引きこもれとか言っているんじゃあないわ。でも人間なんだから何かしらクラスに馴染めない要素があるはずよ。わたしは1巻ではそれは彼女の容姿だと思っていたのだけど、どうも違うみたいだわ、風早の態度を見ている限りね。そして、この表紙を見ている限りね!
それ以外にも人間はいろいろな要素を抱えているものじゃない。女子の世界っていうのは強固なヒエラルキーがあるのよ。ちょっとでもアウトなことをしたら減点されていく厳しい身分制度がね。そしてそれは決してその外部だけに起因するものじゃないわ。みんな何かしらのハンディキャップを背負っている筈なの、たとえばどうしたって男にモテるとか、いつまでたっても予習をしてこないで人のばっかり写すとか、遅刻魔とか、嘘吐きとか、そういうことで人間関係っていうのは築かれていくのよ。それに、私は高校生のときはお化粧していない子とは自ら進んで休日に遊んだりしなかったわよ、だってつまらないもの。わたしは私が差別的に選択的であることを隠したりしないわ。
そう、私が言いたいのは、爽子が本当にいい子なのはわかるけれど、それが生成された原因が“誤解”って何なのって話だわ。そんなことってありえないでしょ。ひとつに集団はそんなに馬鹿でも暇でもないわ。もうひとつは、爽子の側の誤解を誘発する原因がさっぱり見えないってことだわ。わたし、たぶんこの子といたら、そのズレっぷりや会話のテンポが合わなくて最初はお互いイライラしちゃう自信があるわ。なんだかそういうすれ違いを描かずに、悪口だ噂だ誤解だ言われてもご都合主義にしか思えないわ。今回の騒動も、どうせ風早に恋してる子の策略なんでしょうけど、それだってまた風早が爽子に惚れてる所為なんだから、一体爽子ってナニモノ?
いいえ、でもまあいいのよ。爽子が幸せならいいの。ご友人も楽しそうだし風早も楽しそうだし。風早に惚れてる子はひどい扱いだけど、もうそんなことどうでもいいわ。だって爽子とわたしの共通点がさっぱり見出せないもの。わたしは私が知人に選ばれていることも、私が友人を選んでいることも自覚しているし、その際にすれ違ったり上手くいかない思いをいっぱいしてきたわ。でもこの子の将来は明るそうだもの。なにかトラブルが起きるとして、それを作者が起こしたとしか思えなさそうだわ。つまるところ、これからの展開に興味を失ってしまったわ。もう、見守る必要ないでしょう?


この子の生き辛さみたいなものがさっぱり見えてこないのが……もっとダークでドロドロしたものに、私は共感するんだわと思った1冊。