大学生に送るサリンジャー精読その1.『フラニー』と『ゾーイー』を批評する

そうか、この日記には[批評]も[評論]もタグとして存在しないんだな。うーん、学生時代の私って謙虚(HxH風に)。さて、この日記も死に掛けていたけれど、最近英語の副産物で少しばかり評論をしているので、ここに書いてみようと思う。たぶん、多くの学生が私…

他人を救えない仏教の物語――手塚治虫『ブッダ』

人生いろいろあって、こころに悩みを抱え、仏教に走る岩瀬。クリスマスに仏教の話題を更新するというのも私らしいではないか。さて、私は佐藤史生『ワン・ゼロ』と水樹和佳子『イティハーサ』の熱狂的なファンだし、この2作品の要点はよーするに「汚れて穢…

グレッグ・イーガン『万物理論』

実はid:Atori:20041214:p1さんのレビューを読み、再読。 イーガンは短編の方が読みやすいと思う。しかし、イーガンがいつもここかしこで提訴する「アイデンティティ」「ジェンダー」の問題が興味深すぎて、長編もついつい読んでしまう。もっとも、長編のメイ…

キリスト教という「無知カルト」――町山智浩『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』

はてなダイアラーでもある町山智浩氏の著作。アメリカ大統領選挙の「前」というタイムリーな時期に出たため手に取って読んだ。 さて、タイトルが示すとおりの、主にアメリカの真ん中と下の方に住んでいると言われる「無知」で「マッチョ」なアメリカ人たちを…

『邪魅の雫』をなぜつまらなく感じたのか、おぼえがき

ようやく読み終わった。邪魅の雫 (講談社ノベルス)作者: 京極夏彦出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/09/27メディア: 新書購入: 3人 クリック: 51回この商品を含むブログ (619件) を見る前作の『陰摩羅鬼の瑕』よりは断然マシだったけれど、やっぱりこれだ…

同人誌はなんで「パロディ」として語られないのか、とか(高橋×望月感想)

さて、わたしは文学生でありつつもここでは漫画研究のひと、という位置づけなので、漫画の話も交えつつ、昨日書ききれなかった感想を書く。拝聴して、高橋さんと望月さんは、すれ違ってはいなくとも、立ち位置が全く逆だと感じた。そして私は望月さんのいる…

高橋源一郎×望月哲男『テクストと読者 ―〈読み〉の在り方を問い直す―』講演会レポート

1月14日日曜日に開催された講演会に(珍しく)行って来ました。私にとって高橋さんは一連の日本文士パロの人、望月さんは『ドストエフスキーの詩学』の訳者さんという認識で、こりゃあ行かない訳にはいかんだろう、ということでお邪魔しました。教室には80名…

『隠喩としての少年愛』は“珍しく”批評精神溢れる少年愛/やおい考

誉めることにしよう。 なかなか信じてもらえないのだけど、わたしは目にしたものは大抵誉める主義なのだ。普段は「魔界のいい人」になるべく人の傷口を嬉々としてえぐり、好んで再起不能にしようと心がけているだけで……。隠喩としての少年愛―女性の少年愛嗜…

『やおい小説論』は論文としてどうなのかしら?

さてと、今年のベストをちゃちゃっと発表する前に恒例のDis行きますかって、本当はねえ、こういう罵倒芸みたいなのもうやめたいんだけどねえ、まあ折角だから対抗言説をあげとくことにするわ。やおい小説論―女性のためのエロス表現作者: 永久保陽子出版社/メ…

『バックラッシュ!』 やっぱりジェンダー・フリーという言葉は使いたくない(イミフだから

バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?作者: 上野千鶴子,宮台真司,斎藤環,小谷真理出版社/メーカー: 双風舎発売日: 2006/06/26メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 3人 クリック: 323回この商品を含むブログ (131件) を見るなんとも評価の…

直木賞を『容疑者Xの献身』が取った件

私は『土の中の子供』『死神の精度』がダメだったので、「芥川賞も直木賞も嫌い。文学なんて、嫌い!嫌い!大ッ嫌い!」な惣流・アスカ・ラングレーになっていたんだけども、今回の受賞レース炎上が非常に面白く、そしてまさかの結末でもう完全にヤられまし…

高原英理氏に会う

名言「夏目漱石を読まなくてもいいからデビルマンを読みなさい!」 夏目を一冊も読まずデビルマン全巻+ネオデビルマン上下巻、そしてあのお寒い予告編までチェック済みの私は勝ち組。 ご本人は静かに熱い。あとやっぱり黒かったです。キャシャーンのどうし…

ゴス記念日制定されますた

ISBN:4062125196 書店にてひねもすゴシック記念日かな、と。高原英理のゴシックハートいつのまにか入荷。

高原英理氏の新刊情報

『ゴシックハート』刊行は9月となりました。 目次を紹介します。『ゴシックハート』高原英理1 ゴシックの精神 ゴシックハート ゴシックの歴史 現在のゴシック 2 人外【にんがい】 「人外」の心――中井英夫 フランケンシュタイン・モンスターの「人外」 吸…

京極堂シリーズ映画化!第一弾主演は堤

嘘!ヤダ!マジー!な情報。 監督……実相寺昭雄 京極堂(中禅寺秋彦)……堤真一 関口巽……永瀬正敏 榎木津礼二郎……阿部寛 木場修太郎……宮迫博之(雨上がり決死隊) 久遠寺涼子・梗子(?)……原田知世 ★オランウータン観察日記改め世界の世界の世界の世界の世界…

お知らせ

http://d.hatena.ne.jp/hizzz/20040524 http://d.hatena.ne.jp/Atori/20040525 いつも楽しく読ませていただいてますワタシ的リスペクターさんたちが『無垢の力』を読む!語る!はてなって素敵!でもはてな本はいらないよ。

感想

ええと、書評なんて書けっこないので感想という形にします。書評は週刊書評さんをご覧くださいまし。 序章 無垢の幻影 第1章 自己愛という不可能―折口信夫『口ぶえ』 第2章 弱くあることの権利―山崎俊夫『夕化粧』 第3章 憧憬の成立―江戸川乱歩『乱歩打明け…

「無垢の力 〈少年〉表象文学論」高原英理

ごめんさない高原英理… いや高原英理師匠…! 題名から内容勘違いしていました。どうせ無垢礼賛のふざけたテキストだと思い込んでいましたが、お…面白いです…!師匠と呼ばせてください!!以下面白さの前提条件; 複数の作品から共通するイメージやモチーフを…

無垢の力―「少年」表象文学論

これには驚いた(笑) やっぱり大学の周りの本屋には面白い本がいっぱいあるなぁと思った。家の近所の本屋では、平積みしてある本はビジネスマンや主婦を対象にしている。人文コーナーは、とても狭く少ない。漫画はまだマシで、魔法士とかスピカくらいまでな…

でも蹴りたい背中は面白かったんだよなぁ

で、そこらへんの暴走自意識に「人間の趣味がいいって悪趣味」って自分でツッコミを入れている方が蹴りたい背中っていう面白い方で。 この間作家志望の方々と呑んだんですが、そりゃあもう綿矢さんは大変な嫉妬のされようでございました。ヒロスエと同じで早…

蛇にピアス……これって面白いの?どこが?

私は去年12回くらい映画館に行ったんですが、これはもう奇跡で。それまでは映画はホールデンばりに大嫌いでした。それもこれもタイタニックの所為。純粋な14歳の頃、世間はタイタニック一色。天邪鬼な自分を押し殺して、つられて見てみたものの、べつにフツ…

黙れ漫画ヲタが>自分

で、少女漫画について少し触れておきます。ここからは興味がある方だけどうぞ。 『ポーの一族』に関して言えば、「血の交換」のモチーフは東氏の指摘とはズレています。情報交換ではなくエネルギー交換ですし、血よりも精神を保つ薔薇(とそれを折るエドガー…

さらりと纏めてみる

東氏本人が「僕の関心はそもそも具体的な影響関係にはありません。辿っていけば『ポーの一族』とかいろいろあるんでしょうが、前にもどこかで書いたとおり僕はオタクの正史を書く能力も意欲もないので……。」と仰っていますし、私もぶっちゃけ影響関係にはそ…

折角なのでリンク先様への返答と意見表明を。

とまぁ、へタレな感じで事を終わらせてしまうのも卑怯で勿体のない事だと思いますので、もう少しだけ補足しておきます。 初めてお越しになった方々に広くダメっぷりを披露してしまいますが、私はあまり文学を読まないのです。漫画はそこそこ読んでいます。そ…

「文学、遅っ。」の波紋

ハラさんのNot A Serious Woundから引用。 そもそものきっかけは、以下のサイトです。 ★ hirokiazuma.com/blog: ファウスト賞と血の交換[ことの発端] ★ 文学、遅っ。(はてなダイアリー - 無言の日記 Don’t forget me,memento me)[触媒]これらに加えて…

文学、遅っ。

そしてその現代ファンタジーにもふたつほど特徴があったようです。まずひとつは、吸血鬼ものがきわめて多いこと。もう少し抽象的に言うと、血を流す、血を交換するというモチーフを中心に据える作品が多いようです。しかもそこで「痛さ」の描写はほとんどな…

彼女たち」の連合赤軍―サブカルチャーと戦後民主主義 大塚英志 ISBN:4044191093

読み途中ですがメモとして記しておきます。噂通り面白かったです。特に前半の永田洋子と「かわいい」をめぐる戦い、女性性の肯定と否定なんかは私がマンガを通じてモロに考えてきたテーマだったので、とても面白いし、興味がわきました。 ただし、この人の『…

もっと報道しろ!2

ブラウン管の中に男がいる。 淡萌黄色に身を固めた京極だった。 黒い手袋に白い足袋。 淡萌黄色に黒を羽織っている。 前髪だけが黄色い。ブラウン管の匣の前に座り、女は視ていた。若い二人の後をカメラが追っていく様を。男は気にも掛けぬ様子だが、女は気…

カテゴリ

漫画・本カテゴリしか使っていないので暇な時カテゴリ整理をしようかと思います。萩尾カテゴリでも作ろうかな。あとは少女漫画カテゴリと読後感想カテゴリを分けようかと思います。ではレポートを書くことにします。

えぇ、アレが1位?アレで1位?謎だ。

このミステリーがすごい!では20位だった京極夏彦氏の陰摩羅鬼の瑕がYahoo!ユーザーが選ぶ2003年ベストミステリーで一位に。実はノミネート作の中で、唯一読んだ作品なんだけど、アレ面白いの?勿論ヤフーのランキングだから、漫画でいうとワンピースみたい…