「無垢の力 〈少年〉表象文学論」高原英理

無垢の力―「少年」表象文学論
ごめんさない高原英理
いや高原英理師匠…!
題名から内容勘違いしていました。どうせ無垢礼賛のふざけたテキストだと思い込んでいましたが、お…面白いです…!師匠と呼ばせてください!!以下面白さの前提条件;

  • 複数の作品から共通するイメージやモチーフを抜き出す読解方法(参考にしたい!)
  • 作品を読んだことはないけど評論はわかるきれいな論理展開
  • あっと驚く、そして頷かされる結論
  • 適度で適切な引用

んで内容がまためちゃめちゃ面白いし興味深い!以下概要;

  • 女性ではなく成人男性でもなく、しかし少女のように欲望され男性の主体性を承認されてもいる「少年」は、いわば「もうひとつの性」
    • 男色とは違い性交渉が禁忌である
    • もちろん関係の質が限定されない同性愛とも異なる
    • 女性に比べて「人格をもつ度合い」が大きい→犯すことにためらい
      • これらの条件からこの愛の形を「少年愛」と呼ぶ(以上P14〜P17)
  • 複数のテキストから、「他者からは欲望される客体でありながら、自分は欲望の主体でない者同士の関係」(P86)を抜き出していく。
    • それは具体的に、男性的な力強さを持つ相手に愛されながら彼には惹かれることなく、やがて自らと同じ「稚児」的な存在と、「『慕わしさ』を交差させて同一化」(P43)するという方向の恋愛。
        • 同一化を目指すゆえ、この少年愛フロイト的ではない「自己愛」の意味を持ち始める(P18)
      • 自分から相手を欲望するということは、「他者を求めて獲得したいという『欲望』」(p41)があり、主体性があるので駄目(=穢い・ムサい)
      • 当然女を求めるのも、汚らわしかったり誇りを失うこと。
        • 獲得欲望とは違う、同一化への心の動きを「憧憬」と呼ぶ
  • これらの「少年」は、男性のジェンダーに必要とされる主体性や獲得欲望に対して、客体であること、望まないことのうるわしさを提出している。