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『マージナル』都市編は失敗作だ

劇団Studio Lifeの『マージナル』を、砂漠編、都市編の順で見た。 当該劇団の作品は、少女漫画を題材としたものが多く、私もこの間の『カリフォルニア物語』とか『トーマの心臓』とかをちょくちょく見に行ったりしていた。 『カリフォルニア物語』は原作がと…

萩尾望都のお絵かき板を見つけて大興奮している萩尾信者の図。

さーてレポート1文字も書いていないですよ。そんな場合じゃないって! なんかネットをうろちょろしていたら、何の因果かお絵かき板に。そこで展開されるは5日間の萩尾望都祭り。そして神絵が出るわ出るわ。いいなァ絵が描ける人は(私は絵が描けない)。で…

『イティハーサ』と『ワン・ゼロ』の共通構造

ポスト24年組による、『メッシュ』以降に描かれたSF作品である 水樹和佳子『イティハーサ』1986〜1999、文庫全8巻*1 佐藤史生『ワン・ゼロ』1984〜1987、文庫全3巻(単行本では4巻) 主体性を奪う宗教との対立、宗教的な安定と平和の否定 目に見えぬ神々…

1、父に反抗する時だけ主体的な少年主人公は男性的なあだ名を持つ

そもそもこの二人の名前が似ている。 メッシュ(本名フランソワーズ・アン・マリー・アロワージュ・ホルヘス)とアッシュ(本名アスラン・ジェイド・カーレンリース、養子縁組後はアスラン・ジェイド・ゴルツィネ)だ。母親によって名づけられたという点まで…

3、女性的/男性的ジェンダー・ロールを同時に押し付けられる

メッシュ、そしてアッシュが父親からひたすらに押し付けられるのは“役割”そのものである。それは時に男娼の形を、時に少女の形を、そして共通するものとしてマフィアの跡継ぎの形をとっている。メッシュ、アッシュはその(内容を問わない)“役割”というもの…

『メッシュ』と『BANANA FISH』――対父性の物語

更新ほぼ終了しました(まとめ以外)。とりあえず、序とまとめだけ読めばいいようにまとめを練っています。今のところBANANA画像なしです。わかりにくいのでいずれ追加予定です。 個人的に、『メッシュ』は萩尾望都の初期作品『雪の子』*1や『トーマの心臓』…

8、まとめ

後で書く。

7、〈母〉という死への回収

李月龍(リー・ユエルン)という登場人物がいる。彼はアッシュと同じく男娼のような少年時代を過ごした。マフィアの妾の子として生まれたが、母はその血族によって目の前でレイプされ、惨殺された。アッシュと同じく人を殺す訓練を受けたが、アッシュが与え…

5、英二による〈母〉の代行――BANANA FISHのみに関するテキスト

『BANANA FISH』は、男娼上がりの天才不良少年アッシュ・リンクスと、とりわけ目立ったことがないが純真で見返り無くアッシュを愛する奥村英二の心の交流を描こうとする。そこで、奥村英二がまるでアッシュの〈母〉を代行するようなシーンがある。フェリーの…

4、ギムナジウム的男性単一社会の崩壊/少年愛の消失

更に言及するならば、ここでのメッシュのせりふ「寄宿舎で暮らす子どもには」には大きな意味が含まれている。つまり、ギムナジウム的閉塞した男性社会はもはや彼にとって何らかの意味をもたらすものではない、ということだ。今まではまるで、ギムナジウムの…

少年主人公は〈淫乱呼ばわりをされる子を捨てた母〉に憧憬を寄せる

メッシュの母はメッシュが2歳の時に別の男と逃げ、それは、父がメッシュを疎む直接の原因になった。アッシュの母は、アッシュの兄であるグリフィンの母を追い出したが、アッシュを産むとまた別の男と逃げた、アッシュも認める「あばずれ(vol.2 p.228)」で、…

2、「反抗」対象としての父と「戦闘」の発生

拙稿『メッシュ精読』での定義をもう一度持ち出させていただくなら、自らの役割を押し付けようとして反発を引き起こす父親との軋轢が「反抗」であり、これは大抵「戦闘」を伴う。また主人公の〈主体のようなもの〉はその戦闘においてのみ見え隠れする――とい…

評論の記法について

〈山かっこ〉で囲まれた言葉は役割を示します。漫画内のジェンダー・ロールと言い換えても可です。 〈少女〉〈非少女〉〈不確定な自己〉〈白痴〉〈支配する父〉〈封印する母〉などといった使われ方をすると思います。 「かぎかっこ」で囲まれた言葉は、普通…

少年愛

『メッシュ』以降崩壊するもののひとつ。『ニューヨーク・ニューヨーク』で主人公のケインがパートナーのメル(共に男性)についてこう語る場面がある。 同性愛を神への冒涜と考える者もいる 俺の母親は…神聖なものを何よりも重んじる 俺は熱心なクリスチャン…

ギムナジウム幻想*1

24年組の一つの特徴として語られるもの。木原敏江『摩利と新吾』に最も強く見られる*1。代表作は萩尾望都『トーマの心臓』『11月のギムナジウム』『ポーの一族』、竹宮惠子『風と木の詩』など。 狭くはギムナジウムそのものを描いた「ギムナジウムもの」と言…

〈母〉の死/〈母〉の愛の喪失

『トーマの心臓』におけるエーリクとオスカーの母、『ポーの一族』のエドガー『風と木の詩』におけるセルジュとジルベールの母、『摩利と新吾』における摩利・新吾は母を実際に亡くしている。初期萩尾望都もしくは24年組においての〈母殺し〉は多く指摘され…

〈少女〉と〈非少女〉

宮迫千鶴の『超少女へ』で指摘された萩尾望都作品内の性(ジェンダー)とでも言うべきもの。少女漫画を読む上で非常に良い指針となる偉大な発明。定義がとても簡潔で良い。 〈少女〉……〈認識行為〉と〈主体性〉を封印し、繭にこもって王子様を待つ少女 〈非…

少女漫画の1970年代――『メッシュ』以前

一般的に語られる「24年組らしい」と思われる要素は以下のものを基準にしていることが多いのではないでしょうか?そして、それを古き良き少女漫画と思っている人も多いのでは。しかし、それはすべて『メッシュ』で覆されています。少女漫画の1980年代を振り…

メッシュのラスト――「殺したといいますか生かしたといいますか」とレヴィは言う

メッシュは〈他者の欲望の鏡〉としての存在を母親の前に差し出し、それを選択するのはメッシュ自身ではなく母だった。そのことで、〈選択権〉とでもいうべき〈自主性〉を「喪失」してしまうことがラストに暗示されている。メッシュは母の再婚相手から、父サ…

父の殺人という自己肯定、母による肯定のための自死

【画像3】を見ていただければわかるように、メッシュは自分を一度は否定し、その後もう一度認めたともいえる父に対して殺意を剥き出しにするのに対し、自分を捨てた母への憧憬のようなものを口にする。一方、殺人に失敗したメッシュ【画像1】は、死んでも…

他者の欲望を写す鏡、メッシュ、ことフランソワーズ

作中でメッシュは美少年として描かれており、幾度も女装をする。性別の間を自由に揺れ動くメッシュのイメージは著しく不安定で、全11話中ミロンのエピソードを除けば全てである10話で「他人の欲望するイメージを被せられている」。ここで、エピソードのおさ…

少女漫画の80年代――『メッシュ』を精読する 何故父親を殺さなければ/母親に殺されなければならないのか?

あいつを殺せたらあとはどうなってもいいんだ あと自分が狂おうが死のうがあいつさえいなくなればいいんだ あいるがいる限りオレは人間にはなれないんだ 一生あいつにおしつぶされるづけるんだ(『メッシュ』vol.1 p111) 【画像1】 萩尾望都作品は80年におい…

ないなら作るか萩尾望都リング

というわけで新機能はてなリングまでリリースされて、最近のはてなの新リリースラッシュは一体どうしたんだろうすごいなぁーと思っているlepantohははてなリングで萩尾望都がないので作りましたとさ。ほい。http://hagiomoto.ring.hatena.ne.jp/ 考えてみれ…

拝啓萩尾望都様

お誕生日おめでとうございますー

あまりに手塚治虫文化賞に言及したいので更新

最近漫画賞に全然言及してこなかったんだけど(あっ医龍受賞おめでとうございまーす)手塚治虫文化賞は言及しますよ。何故なら萩尾望都様が審査員だから。そうさここは萩尾望都ファン日記さ! 手塚治虫文化賞は選考過程を見せる賞として発足して、最初の数回…

残酷な神が支配するが文庫になっていた。

残酷な神が支配する (2) (小学館文庫)作者: 萩尾望都出版社/メーカー: 小学館発売日: 2004/10/01メディア: 文庫 クリック: 4回この商品を含むブログ (14件) を見るイアンが表紙の2巻を出したかったのに画像がないんだって。またかよ。 表紙書き下ろし&巻末…

漫画まとめ

それにしても、あまりに久しぶりなため、何がなんだかわからない感想なので簡単に自分的少女漫画観を纏めてみます。 少女漫画に多大なる影響を与え、少女漫画の手塚治虫と呼ばれるのは萩尾望都ですが、私は彼女の本質は、〈少女〉からの脱出だと考えています…

ご意見を頂きました。

# ぽち 『「トーマの心臓」でキリスト=オスカーはちょっと違うと思う。それが有り得るならば、オスカーの元へユーリを行かせたエーリク=キリストについても言及しなければならない。しかし、そうではなく、この場合、贖罪を負って死んだ者がキリストだと考…

衰えたなぁ

ポーの一族語りですが、なんか大富豪の一週目でジョーカーを使うような、そんな感じの論理展開で、下の文はあくまで下書きですって主張したくなりました。してもいいですか?

「私にはもうエドガーが描けない」理由

最初っからファンの方々の逆鱗に触れるようなことを言えば、エドガーとはグレッグでしょう。 ごめんさない(早い)。イアンでもいいです。 順を追って説明します。 まずポーの一族について語るとき常に問い掛けられるのはアランの存在やポジショニングについて…