『メッシュ』と『BANANA FISH』――対父性の物語

更新ほぼ終了しました(まとめ以外)。とりあえず、序とまとめだけ読めばいいようにまとめを練っています。今のところBANANA画像なしです。わかりにくいのでいずれ追加予定です。
 
個人的に、『メッシュ』萩尾望都の初期作品『雪の子』*1や『トーマの心臓*2と同じく、念碑的作品ということが出来ると思う。といっても、24年組を扱う言説は自分を含め70年代を中心としている。そこでもう一度80年代の少女漫画が描いたモノを見直すことで、最終的に『少年魔法士』『残酷な神が支配する』そして『バルバラ異界』を見直そう、というのが今回の簡単な目的ではある。
 
さて、『メッシュ(80〜84)』以降*3、最も『メッシュ』に近い作品は、今回扱う中ではもっとも有名であろう吉田秋生BANANA FISH(85〜94)』ではないかと思っている。なによりも物語を構成する要素がそっくりなのだ。ここに列挙してみる。

  • 1、父に「反抗」する時だけ主体的な少年主人公は男性的なあだ名を持つ(メッシュとアッシュ)
  • 2、「反抗」対象としての父と「戦闘」の発生(マフィアのボス、銃とナイフと戦争)
  • 3、女性的/男性的ジェンダー・ロールを同時に押し付けられる(女性名、男性によるレイプ/マフィアの後継者)
  • 4、少年主人公は〈淫乱呼ばわりをされる子を捨てた母〉に憧憬を寄せる(無根拠な母親像肯定)
  • 5、ギムナジウム的男性単一社会の崩壊/少年愛の消失(寄宿舎の子ども/刑務所のウサギ)
    • 6、英二による〈母〉の代行――BANANA FISHのみに関するテキスト
  • 7、母という死への回収(主人公の死)
  • 8、まとめ

以降、詳しく見ていこうと思う。

*1:家督を継ぐために男装しているが、成長するまえに自殺すると宣言し、実際に雪の日に死ぬ少女の物語。成長の忌避を文学的に描きセンセーションを起こした。

*2:自殺したトーマを巡っての少年達の愛と葛藤を描く、代表的ギムナジウム作品。主人公ユリスモールの宗教的絶望からの回復と脱出を描いた。筆者はアンチ・ユリスモール。萩尾望都作品の救済者の性格http://d.hatena.ne.jp/lepantoh/20031230参照。

*3:例えば樹なつみ『メッシュ』と『訪問者』に多大な影響を受けたと一目で解る『マルチェロ物語』シリーズを書いたりしている