買い与えてでも読んで欲しいと思う漫画ベスト10

Fed-Ex is #1 hated !!

こんばんは、長らく更新していないのに見に来てくれてありがとう。
さて、去年もやったんですが、今年読んだ漫画ベスト10を発表したいと思います。ルールは以下のとおりです。

  • 2006年に最新刊が発売されたもの、および連載されたもの
  • 指標として得点をつけてみますが、加点制です。100点の指標は、少年漫画では尾田栄一郎ONE PIECE』44巻、青年漫画では若杉公徳デトロイト・メタル・シティ』、少女漫画ではいくえみ綾『バイ アンド バイ』とします。これらの漫画は、可もなく不可もなく、値段以上の価値はあったという感じ。レディコミはあまり読みません。
  • 基本ロックなものが好きです。その上で評価基準はいつも常に3つです。ひとつ、評論的な文脈から誉められるか否か。ひとつ、好きか嫌いか。ひとつ、面白いか面白くないか。

■と、その前に今年のワーストを。順位はつけません。

デスノート』、『未来日記』がダメでした。こういう思想、ノリがさっぱり受け入れられません。
舞姫 テレプシコーラ』。賛否両論あるけれど、わたしにとってはあまりに説得力不足で、ただショッキングな展開をスパイスにしたようにしか感じられませんでした。手帳の記述なども、遺された人の理解を助けるものでありすぎるし、掲示板やらいじめのギミックに全く真に迫ってくるのがありませんでした。
レナード現象には理由がある』。かわいらしい女の子にコンプレックスを抱いてこうなってはいけないなと肝に銘じました。
ある意味『大奥』。2巻での転回っぷりは微妙。
ある意味『原獣文書』。春に完結篇特別雑誌が出ると散々告知しておきながら、夏コミ・冬コミにも新作を出しながら、未だに完結篇がお目にかかれないとはこれいかに。確かに後日譚は見ましたが、RJもZENEもNOAHも顔が一緒な三つ子なので、アレが誰の子孫なのかさっぱりわからずフラストレーション。
その他はあんまり想い出に残っていません。『あひるの空』『BLEACH』『NARUTO』『プライド』もあんまり面白くなかったけど、非難するほどではないかなあ。


スキップ・ビート! (14) (花とゆめCOMICS (3005))

■10位 仲村佳樹スキップ・ビート!』 155点

2月の12巻「どうしてくれようこの娘は」あたりから変な暴走を続けまくってきた作品。
ていうかね、最上キョーコ可愛すぎ! そりゃあ不破尚も(さすがに超ネタバレなんで隠す)キョーコに愛の告白するわ(ビックリしたけど)! あんなこんなでキョーコに手を出さずにいられる敦賀蓮のすごすぎる耐久力にひたすら感服する漫画。いやあ、なんで一部の少女漫画はこれでもかというくらい自己抑制能力を競いあってるのに、そのことは全然話題にならないのかしらねえ?
1位の作品にもいえることだけど、少女漫画はどーせ醜い人間なんて描けっこないんだから(もちろん描ける人もいるけどわたしは1人しか知らないわ)、どれだけ美しくてもそのことが相手に何の影響も及ぼさない、っつーかむしろ悪影響?っていうところに着地するのは非常に正しいことだと思う。9位、そして1位の素晴らしい共通点はそこね。しっかし、今年も敦賀蓮は何もしなかったなあ、全部、マネージャーの社とか監督とか、はたまたライバルなはずの松とかが行動してくれてるだけ。
ウザいと思ってたレイノ君も敦賀蓮の過去伏線回収用に出てきたことがわかって一安心。とっとと枷を外して暴走してください。


HUNTER X HUNTER23 (ジャンプコミックス)

■9位 冨樫義博HUNTER×HUNTER』 160点

ワースト入り? ご冗談。わたしは根っからの信者なので、休みたいだけ休んでいただいて構いません。いつか生きている間に続きを描いて貰えれば……。
いやあ、いつも冨樫の漫画は完璧を通り越していて誉めようがないっすね。メレオロンとゴンの会話にほとばしる冨樫ズムにこれ以上ない心地よさを感じてしまう。そして何よりキルアとイカルゴの友情! ひいい! 俺のキルア好きは異常! とわかっていても素晴らしかった!
いやあ、思い起こせばね、当時、「“銀髪による憧憬”ブーム」が個人的に巻き起こっておりまして、まず『キングダムハーツⅡ』のラストでリクがソラになんか、俺はお前になりたかった的なことをぶちまけるのにヤられましてね。次に『フルーツバスケット』の鼠が猫に俺はお前がうらやましかった的なことをぶちまけましてね、ああ、銀髪っていいですよねえモードだったんです。誰よりも優れていることを義務付けられているじゃないですか、銀髪は。そしたらイカルゴですよ。「俺はイカになりたかった」。これがキルアがイカルゴを助ける理由なわけです。ぶっちゃけ、クラピカとかレオリオならそんな理由でイカルゴを助けるかは判らないわけですね、でもキルアは横にいるゴンの眩しさにずーっとずーっと憧れてきたから(自分の方がゴンより強いのに/強くなきゃそれはそれでイヤなのに)、イカルゴが他人だと思えなくて助けちゃうんですよ。この手の感情って冨樫作品で描かれたのは多分初めてで、キミすごくイイよ!と興奮しながら見てました。やっぱ冨樫はすげーわ、わたしの原点。
その点。『デスノート』のニアは憧憬が足りないですね。最後にはすっかりメロのファンになってました(どうでもいい)。いつか、続き読めるの待ってます。


フラワー・オブ・ライフ (3) (ウィングス・コミックス)

■8位 よしながふみフラワー・オブ・ライフ』 170点

一応言うと、2日前に発売されたウィングスで最終話を読んでます(が、順位に変動はナシ)。
作りもキャラも話もめちゃめちゃに上手くって、ハル君のすがすがしさに惹きつけられ、翔太のほんわかさに癒され、真島のキャラに笑わされ、いやあ良く出来てるなあ、と思います。てか、彼女はちゃんとウィングスに戻ってきてくれるんだろうか……ぶっちゃけウィングス連載作品が一番面白いので続けて欲しいのだが
最終話に近づくにつれ人間の悪意がボンボン暴走して、その度に後悔したり許したり嗤ったり、なんか怒涛の展開ですごかったです。ただ、最後いっこだけ決着つけて欲しかったことがあって、それが心残りだなあ。
ま、でも今年の前半はホント、真島に頭やられてたんで、8位で。


少女ファイト(1) (KCデラックス)

■7位 日本橋ヨヲコ少女ファイト』 180点

バレーボールやりたい……。
日本橋ヨヲコはいっつも「境界がなくなる話」と「突出した才能が友人を遠のけ身を滅ぼす話」と「嫌いだけどやるほど好き/好きなのに下手なほど好きな話」を書いている人、って感じだったのだけど、それが今回も確実に受け継がれていてこれからどうなるのかワクワク。あとシゲが格好いい。
ルミコ登場とか、いきなり弟クンの視点になったりと進化も見られたすごーく期待の連載。


■6位 モリエサトシ『不埒なシスター』『泣き顔のマリア』『日陰のシスター』シリーズ、『猫の街の子』シリーズ、および読切『保健室の奇妙な住人』

単行本はまだかー!!
ああ、もうね、愛しちゃって愛しちゃって。最高。最新の読み切りは「ザ・花とゆめ」掲載の『日陰のシスター』だったんだけど、これがまたいいんだ。しかもモリエさんご本人が高木しげよしサンという漫画家さんと双子というのもあって、どうしても深読みしてしまう。モリエ作品に出てくる、悲しそうに笑う遊び人(?)が好き。モリエ作品に出てくる、愛情の方向がちょっと人と違う人が好き。そしてなにより、モリエサトシの描く閉鎖的な空間が、そこでだけ築かれる絆が大好き。
来年もずっと追いかけていきたい、ていうかむしろ国会図書館に行って過去作品読み倒したい作家さんです。


7SEEDS 9 (フラワーコミックスアルファ)

■5位 田村由美『7 SEEDS』 190点

夏B編でイラつき春編でテンションあがり冬編で号泣した後秋編で鬱になりましたが、いやぁ本命は夏のAチームだったとは。今までは春のチーム贔屓でしたが、すいませんこれからは夏Aの方向で。もう夏Aにちょう思い入れ!
とりあえず人に薦めることにしている少女漫画作品なんですが、この作品は『デスノート』や『舞姫テレプシコーラ』がダメな理由を説明するのに最適な気がします。それらのダメ作品は、佐藤史生風に言うと悟性がない動物の話にしか見えない。悟性がないっていうことは、葛藤がないっていうことでもあります。誰の?――蹴落とそうとしている人の! そう、人を蹴落とそうとしているのは、役にたつかどうか選別して殺そうとしているのは、憎んで憎んで切り刻んで抹殺してやろうとしているのは、『7 SEEDS』の中でだけ、「わたし」になりえるのです。ああ、たまんない恍惚。
そんなこんなで無情で非情(に思えるほど友情と有情!)の殺人ゲームを描いた夏A編は毎月本誌をチェックしてしまうくらいスリリング、面白く、かつ毎回絶望できて落ち込めた素晴らしい出来でした。特に好きなのはマドンナ、そして何と言っても(左上)! 選ばれるためにアウトサイダーのポジションを自ら選びながら、心根までは暴力的になりきれていない彼が、自らの役割を全うするために積極的に(でも消極的に!)自らの手を汚していく姿に正直、憧れます。わたし、弱いんですそういう人。だから、なるしまゆりが描くアンチ・ヒーローが大好きなんです。そう、人を救おうとして、自らの役割を感じ取って、仕方なく自分から「殺人者」の役を引き受けて上手く事を運ぼうとしているのは、やっぱりこの漫画の中でだけ、「わたし」が本当に憧れるものになれるのです。なんていう慕情!
薦めた人から「寝れなくなった」「吐き気がした」などの誉め言葉を頂いた作品を引き続き猛プッシュしていく所存。


魔人探偵脳噛ネウロ 9 (ジャンプコミックス)

■4位 松井優征魔人探偵脳噛ネウロ』 200点

ぶっちゃけ活動時間の5%くらいネウロのために充てられていたのではないか。っつーくらい、「ファン度」でいえばぶっちぎりの作品。
元々は破天荒で倫理もへったくれもないこの作品のファンだったのだけど、いやあ、この一年でどれだけの変貌をとげたか! すっかり私好みの漫画に衣替えしてしまって、不思議なこともあるもんだって感じ。萩尾望都『偽王』のラストや『ONE PIECE』でサンジが登場したときにも激しいデジャブに見舞われたけど、それにしたってここ2週のネウロはちょっと神がかりすぎでは。
ネウロ』の所為でジャンプアルティメットスターズも購入しちゃったし、ドラマCDバージンまで失ってしまったわたしなんだけど、「わからんものはわからん」けれど「その人にとってそうならそうなんだ」ネウロというところは結構良くできてたかなあ。あー。アニメ化しねえかなあ。
ネウロ、弥子のみならず、いじめられっぱなし(! いじめだいすき発言はやばいかしら?)な吾代さんとか、テンション掴めない笹塚氏とか、ウザい石垣、そして何より超少女漫画してるサイたんなども大好き、敵も(そう敵も!)みーんな好き。
漫画を読む原始的な快楽をいっつも貰っています。泣いた笑った萌えた燃えた! これにはこうふく! 少年ジャンプ最高!(まさかの太臓オチ)


潔く柔く 4 (マーガレットコミックス)

■3位 いくえみ綾潔く柔く』 220点

ああやっぱ天才だわこの人。このシリーズは『バラ色の明日』シリーズを越えた。
オムニバスでありながら全ての視点がどこかで繋がるという小気味の良さと悪さを兼ね備えた恐ろしい完成度を誇る作品。しかも『バラ色の明日』以降のいくえみ綾のモチーフの一つである「フィクションに憧れる私」を「フィクションである漫画」の中に取り込むという入れ子構造がついにここで完成をみた気がする。なんだこのリアリズムは!
いくえみ論はいつかまとめたいのでまあ、この辺にするとして、確かこれは『大奥』と発売日が近くって、同時に読んだのを覚えている。そして、この漫画で、主人公は、「あたしは 彼女とは 違う あたしは人を救うことなんてできやしないけど 自分くらいなら救える あたしはせめてあたしを救おう」と結論するのだが、それが『大奥』のラストと綺麗なコントラストをなしている、と強く感じた(というか話自体が対照的)し、わたしはこっちを選択したいなあと思ったのでしたー。
てかねぶっちゃけいくえみ男子格好良すぎだろ。


闇金ウシジマくん (6) (ビッグコミックス)

■2位 真鍋昌平闇金ウシジマくん』 290点

これは、とあるはてなダイアラー選書です。ありがとうございます。
完璧。わたしが漫画に持っていて欲しいと思うものを、想像を遥かに超えたレベルで兼ね備えている。
少年・青年漫画編のなかでも、『ネウロ』『少女ファイト』はどちらかというと少女漫画的な感性も反応してのランクインだけど、『闇金ウジジマくん』は少女漫画やレディコミには絶対描けない世界を描いている、シビアで地味な職業を扱った漫画。このドス黒さがクセになる、最高!
よく、「格差社会」や「フリーター問題」と結び付けられて語られる本書だけど、そういった状況は、時に肯定され、時に否定されているように感じた。そりゃあ確かに、フリーター、派遣、ギャル男、ヤクザ、ヤンキー、風俗嬢と、出てくる人々はいわゆる社会の底辺にいる人ばっかりで、仕事も生活も厳しそうに見えるけれど、ウシジマくんはそういう人を相手にしているわけだから、批判ばっかりしているわけではもちろんない。彼らと対等でもないし、時に見下しているようにも見えるけど、個人的には、丑嶋社長は、個人主義者というか、自分と他人を完全に分けている人なだけなんだと思う。わたしはむしろ逆で、いろんな人の人生を心情の上では引き受けちゃうし引き受けたいと思っているわけで、「ゲイくん」のゆーちゃんとか、「ギャル汚くん」の純とかがとても他人とは思えない。
この漫画で最も感嘆した部分は、特徴的な人の醜さの描き方。少女漫画に共有される欲求として「他人から承認・肯定してほしい」というのがある、というのは多く指摘されることだけど、この漫画ではそれがある種の過剰さを帯びて出現してくる。たとえば私の好きなゆーちゃんは、自分がゲイであることを、さまんさという最初の恋人を通じて初めて公認され、その幸福な感覚(と同時に、付きまとう罪悪感)が未だに忘れられずにいる。また、渋谷の中では抜群の知名度を誇りながら、自らのイベサーの中ではやり込められて貧乏クジを引いてばかりのも、同様にイベサーを通しての自分の承認を求めている。ところが、この作品のいやらしく、そしてすばらしい特徴として、そこには承認の裏返しの「見下し」「差別化」「無視」、そしてその延長としての「嫉妬」「蹴落とし」が描かれているのだ。結局、ゆーちゃんは、自分を承認してくれたさまんさと決別することで孤独でゆるーい生活に戻っていき、一方で承認装置としてのイベサーに固執したは作品中でも最も過酷な結末を迎えるのだが、このあたりには単純にうなってしまった……本当に上手い、面白い、染みる。
すごく苦いのに小匙一杯の砂糖が入ってるのが憎い、文句なしの第2位、290点くらいあげる。


ゴールデン・デイズ 第4巻 (花とゆめCOMICS)

■1位 高尾滋『ゴールデン・デイズ』 300点

キングのためなら死ねる。
それ以外に何の理由が必要なんでしょう。キングのためなら死ねます。というか、クイーンのためにも死ねます。あ、ついでに慶のためにも死ねます。やっすい命だな!
いやあ、でもやっぱりキングのために死ねると叫ぶべき漫画でしょう。そういう話なので。
高尾滋らしい設定が満載の今作、やっぱり出てきた代替の生とか弱者による守護とか美形の標榜といった高尾滋イズムに骨の髄から痺れさせられちゃってるわけで、そもそも絵柄が最高。ほぼ私の理想とする描線・体格・容貌をしているし、その絵で描くのが大正時代・スタンドカラーのシャツにリボンタイの3ピース洋装・詰襟の学生服・懐中時計・洋館・和服・カフェー・女給・パイプ・乗馬服・馬車・日傘……と夢のような美しさに満ち満ちているのだから、作者はわたしを涅槃に誘っているのかと疑いたくなるのも当然のことはり。
とか何とか羅列してもあんまり読者フレンドリーじゃないので解説すると、この話は現代から大正時代にタイムスリップしてきた光也が、光也の祖父にあたる慶光(よしみつ)とそっくりであることから、「記憶喪失の慶光」として過ごす、という話。そして、タイプスリップの間際、光也が最後に聞いたメッセージは、死にかけた祖父・慶光の、を助けたかった」という懺悔だった、というわけ。つまり、ここでは最初から死を予期された人物として登場し、光也には彼の身と未来を犠牲にしてでも彼に襲い掛かる運命を逸らすことが期待されている……のだが、当然光也は慶光ではない。そして、過去に戻って右も左もわからない光也と違い、はイタリア系のハーフで堂々たる美しさを持ち、また慶光とその姉を世話している春日家の息子であり、性格は俺様でわがままで芯が通っていて、なんっつーか、まさに生まれついてのキングなんである。ちなみに慶光/光也はナイト、その姉でありわたしの大好きな百合子さんはクイーン、そしてキングの妹はビショップと呼ばれているのだが、キングナイトの間に明らかな庇護/被庇護の関係がありながら、キングを守ることを期待されているのは他ならぬナイトであり(ここが高尾滋らしいのだが)、これが何とも頼りないのだ! いやでも、前作で才蔵にキュンキュンきてた人ならやっぱりそこに高尾イズムを見出すこととは思うけど。
さらに、そのキング仁が慶光(じいちゃんの方)のことが好きだとか抜かすから大変なことになってる。腐女子が大騒ぎしているのを傍目で眺めながらいうが、わたしがこの作品を1位に選んだのは他でもなく慶光に仁がガッツリ振られているからであり、まさにその振り方は『日出処の天子』のラストばりの残酷さで、ぶっちゃけた話そんなこと言われたらあたしもう生きていけないレベル。そして確実に本質を突いている、少女漫画少年愛史に刻まれるべき解釈少年愛なんだからくっついちゃあダメよ、振られなくっちゃあね! 
だからこそ、物静かで美しい慶光から、うるさくて暴走型の光也に中身が入れ替わったことは、にとって二重の意味を持っている――自分が愛した人の喪失でもあり、そして自分を拒絶した人がその時代の規範に捉われない型破りな人格になって再び現れたことでもあるのだから。この設定が上手すぎて、毎回ニヤニヤしたり悶絶したり、いやあ忙しいこと、面白いこと!
実は、その「キング振られシーン」は、単行本化されてないばかりか先号の『花とゆめ』で発表されたばっかりなのだけど、そのシーンがなくたって1位は確実だった。そもそも出てくる母親がすごい、これって『アロイス』とか『メッシュ』? 『残酷な神が支配する』? って感じだ(読んだこと無い人、誉めてないけど誉めてる感じだけでも伝わってくれ!)。そんでもって脇役がまた美ッ人だこと、しかも自分が美形だと自覚し吹聴するのが高尾キャラの良いところ、見ていて清清しい高慢さである。とりわけお気に入りは百合子(クイーン)と慶で、クイーンが傘で暴漢退治をするシーンや乗馬服で助けに駆けつけるシーンを何度も何度も読み返してしまう。慶は全身刺青のトラックの運ちゃん的な出で立ちなのに、この作品の中では「知」と「理性」の部分を担っている、っていうのも、あーたまんねー超カッコイイ(ちなみに光也は箱入り息子だったのに「思いのままに行動する」「ルールを無視する」人として描かれている)! 慶が自分を抑えて静かに佇んで絶望しているのを見るだけでご飯3杯はいけます。てかさあもう一度いうけど、なんで少コミのヤリチンばっか話題になって、大増殖中の自分を抑える男どもは全く話題にならないワケ?
そんなクイーンと慶を凌ぐ美しさを持つのがやっぱりキングで、彼ほど「詩」という言葉が似合う人もいないです。キングは詩! キングは花! そして何より……ロック。いやあ、高尾滋作品は毎度のことなんですが、すんごいロックです。「僕たちは何にも支配されない!」と彼が宣言するシーンなんて、限りなく透明で純粋なロックですよ、ああもう、この漫画、絶対わたしの棺に入れてくれよな!
まあ、これからキング×ナイト的な方向に日和ったら全力で全否定する危険性も秘めてるんだけど、そこはわたし、この作者と信頼関係を築けているので問題ナシ。だって、二人がくっついたら光也は生まれてないべ? と、核心突いちゃったわ、ごめんなさいね。
いやあ、これは素晴らしい新世代の少年愛漫画! 300点、もちろん第1位でしょう! おめでとう、ありがとう!

■と、いうわけで授賞式は終わりましたが……

LALA DX系が豊富な年だったのに、全然受賞させられずに終わってしまった!
斉藤けん『花の名前』、草川為『十二秘色のパレット』、高木しげよし『花にアラシ』、にざかな『4ジゲン』もさることながら、やっぱりここは緑川ゆき夏目友人帳に触れておくべきかと。緑川作品の主人公といえば銀髪。もう問答無用で銀髪なのだが、『あかく咲く声』や『緋色の椅子』といった赤×銀のシリーズよりも、蛍火の杜へとか『夏目友人帳』といった緑×銀のシリーズの方が似合う。とくに『蛍火の杜へ』は、すでにレビューしたけれど絶対ハズさない泣ける短編で、『夏目友人帳』の連載は嬉しいばかり。
「連載している中で一番の漫画は?」と聞かれたら真っ先に1位に挙げる少年魔法士がランク外。10位にしようか迷ったけど、やめた。でも、4月号かな? レヴィが「羽虫には羽虫の価値がある」とアークに問いかけるところは良かった。でも、月に15ページくらいしか載らなくて、話が全然進んでいない。結局レヴィが死ぬのか、アークがどうしてああなったのかは解らず仕舞いで来年を迎えることに。
その他、少女漫画は『別冊マーガレット』が相変わらずのクオリティ。神尾葉子『キャット・ストリート』も4巻の最後でかなりショックを受けたし、評判の高い『君に届け』、安定している『ラブ☆コン』、『高校デビュー』などそろい踏み。まあ、わざわざわたしがランク付けしなくてもみんな読んでいるだろう、ってことでスルーしちゃったけど、面白かったよ。
青年漫画は軒並み面白かった。曽田正人capeta』、乃木坂太郎/永井明『医龍』などは素晴らしい出来。とりわけ後者はいろいろと唸らされたが、去年もランクインさせたので外す。また、律儀に『ヴィンランド・サガ』を買ったのだが(注:わたしはこの作者の前作を酷評した)、別段たいしたこともなくって途中でほっぽってしまった。『ヒストリエ』の続刊が待ち遠しいけど、アフタヌーンを見ると結構酷い状態で載っていることがあり、ちょっと心配。そうそう、『無限の住人』は、最後の最後で持ち直してきた。尸良さんを上手く絡めてほしいなあ。
少年漫画は、今年もジャンプ系以外あまり読んでいない気がする。チャレンジはしてみているんだけど、どうも馴染めなかった。そんな中、『太臓もて王サーガ』を毎週楽しみにしてしまうのは、わたしの「くそー!うらやましいぞ男子!」な90年代小学生根性から来ていると予想(木嶋を応援中)。『アイシールド21』を全巻集めたが、一方で『BLEACH』や『NARUTO』から離脱してしまった。『ONE PIECE』のここ1ヶ月くらいの面白さは異常、ていうか最新刊、まだワンピで泣けることにビックリした。やっぱり上手い。そして何といっても『ネウロ』、去年からの連載ではあるけれど、今年の脱皮の仕方は見事だった。冨樫がいなくてもなんとか堪えられているのは松井のお陰。
おお、そうそう大変なことを忘れていた。『鋼の錬金術師』が久々のヒット。キンブリーの言っていることにウンウンと頷いてしまった。あのキャラクターはいいね。たぶん11位くらいにランクインしていたんだろう。
少女漫画の名作を読もうと、色々と買ってみたが、なかなか読み進められなかった年でもあった。『輝夜姫』とか『エイリアン通り』とか『アーシアン』とか、全巻放置してあるのをどうにかしたい……。
来年読みたい漫画は、とりあえず来年こそ『ジョジョ』を読みたい! あと『うしおととら』! 森脇真末味さんや吉野朔実さんも読みつくしたい。『シグルイ』『へうげもの』も読んでないので読んでみたいぞ!


Under the Rose (3) 春の賛歌 バースコミックスデラックス

■最後に特別賞を発表します。

えーっとまだ3巻までしか読んでないのですが船戸明里『アンダー・ザ・ローズ』はものすごい衝撃でした。1位レベルです。絵も完璧。
――っつーか今はじめて4巻出ていたこと知りました。これから読みます。とりあえず、今のところすごすぎて採点不能、ということにしておいてください。あと、ライナスかわいいよライナス!


天界の城 (ハヤカワ文庫 JA (664))
それと、年間最も読まれ、また感銘を与えた漫画家に佐藤史生を挙げたいと思います。彼女の作品はまさに現代の予言書のようで、この間も『精霊王』を読み、そこに出てくる事象のあまりの的確さに顔が青ざめました。ヒンクリー夫妻と全く同じことをしている有名人たちを思いだしてしまって……。また、セクシュアリティに関することで彼女以上の成果を挙げた人をわたしは知りません。彼女の作品から多くの着想を得たこと、そして現代を見返す鏡とさせていただいたことに勝手ながら敬意と感謝を表明したいと思います。


んでは、読んでくれてありがとう。来年も、多義的で不安定で暴力的で、でもってロックな素晴らしい漫画にたくさん出合えますように。良いお年を!