それでも私は銀座に行くの

ボードリヤールの絶望的な公演に「ほんとうにそうなのか、もう何も出来ないのかって一生懸命考えてるのが俺なんかだけど」と言っていた教師がいた。彼が言うには「現代で恐いのは都市と百貨店の閉鎖性」らしい。へーそうなんだ。と感心しつつもすぐ銀座に行くのが私の限界か。妹の誕プレをアナスイで購入。それから三越をプラプラしてた。
先週木曜にも三越に来て、日記つけなかったんだけど、その日アルビオンで声をかけられてハーバルオイルのハンドデモを受けていた。すごく気持ち良くて至福。しあわせ。おばちゃんいい人。商品は気に入ったけどオイルなのでニキビが悪化しないかだけ気になって、「すみません、少し考えます」といったらなんとサンプルをくれた。びっくりした。こんな購買力なさそうなガキに「じゃあちょっとお家で使ってみてね」ってサンプルをくれるなんて只者じゃない。あまりに感動して何か買おうと思いエレガンス新粉を試すもファンデがすでにかなり崩れていてよくわからず。結局化粧水が切れていたのでスキコンを買った。接客してくれたのはおばちゃんとは違う若い方だけど落ち着いていていい雰囲気の人だった。
悲劇はそれからだった。
帰りに松屋をうろうろしてる時に運悪く教師の言葉を思い出してしまった。百貨店の閉鎖性――コンビニがガラス張りなのは防犯の為だ。通行人と客を防犯の為の警備員にするシステム。だからコンビニには数人しか常駐しない。百貨店の場合、窓はない。警備員がいて過剰な従業員がいる。そこで客は「私」を意識せず「商品」を意識する。コンビニにある私―商品の関係が買う―買わないになる。
私はバカだった。松屋のコスメカウンターが立ち並ぶど真ん中で立ち止まって「商品を見ないでみた」。それは何とも言えず居心地が悪かった!ランコムのお姉さんに挨拶されたけど私は「商品を見ないで」いる。「私」が百貨店の中でいつもこう見失われていたと思うと気分が悪くなった。さっき払ったスキコン代が悔やまれて悔やまれて仕方なかった。
自分自身に絶望した。