ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還

どうして私はこれを理解出来ないのだろう…。
別に天の邪鬼になって批判しているのではない、できるなら理解したいが(泣)、本当にこれは理解出来ない。このラスト。これでいいのだろうか?
 
と、その前に以前ボロクソに言った『二つの塔』のおさらい。

  • シナリオがとにかく最悪。
  • 作戦皆無のオーク戦
  • 丸太で破られた門をトンカチで補修、当然即また破られた(笑うところ?)
  • フロドの内的葛藤が全く描かれない
  • ファラミアが何故二人を信じることにしたのか描かれない

ちなみにスペシャルエディションとかは知ったこっちゃない感じです。
 
で、今作は基本的に面白かったんですよ、やっぱり大画面で観たら映像だけで感動できるし、細かいストーリーでどうよソレっていうのはあったけど*1ガンダルフが素敵だから許せるし。戦闘お爺ちゃん。
でもあのラストがあまりに衝撃的で『これは好きじゃあないけどまぁいいラストだなぁ』と思っていたんですけど……なんか泣かせる音楽とか流れてきてこのラストじゃ泣けないよなぁと思ってて、そこから啜り泣く周りとちょっと異和を感じ始めたのだけど。
ネットの感想にはどこも「サムが主人公」と書いてある。でも“あなた”を背負うことしかしなかったサムは結局好きな子と結婚して幸せな生活を送るわけで――確かに「サムは幸せな一生を送りました。」で主人公的ではあるんだけど――フロドは海の向こうの永遠の国(だよね?)に行ってしまう。彼自身が“永遠に消えない”と書き残した傷と、四年たっても消えない痛みを連れて。
主人公はやっぱりフロド。なのに何故そう描かれないのだ?
彼は世界を救うために生け贄となり一人その歪みを背負った。その彼が“永遠の国”に行ってしまうのだから恐ろしい。ひとつに彼の傷はいつ癒えるかわからない。もしかしたらホビットの一生より長い期間を要するかもしれない。そしてもう一つ。彼は中つ国のために犠牲になりながら、中つ国の中では暮らせない。
中つ国を救ったのは彼ですが、それは彼の世界ではなくなるのです。彼は自分のいない世界の為に犠牲になったのです。
そりゃ、美しく優しいフロドは完璧で感情移入し難いです。だからってあまりに、フロドの描写は少なすぎます。アラゴルン、サムに比べても、ゴラムに比べても。ゴラムというのはもちろんフロドのダブルになっていて、彼と同じく善悪の境界上で苛まされるのですが、そんなことしないでフロドの描写をすればいいのに、と思います。本気で。
でないと、何となくラストの重圧感から逃れさせる為にサムを主役に仕立てたみたいです。
 
私はかつてサムたちと一緒でこうやって人を見送ったことがある気がします。道が分かれた彼が、神学校に行くためにボンへ行く電車に乗るのを見た気がします。*2
私だったら最後にサムに物語のラストを読ませて癒えない傷の存在をしりサムに絶望させるか追いかけさせるかするなぁ。ティル・ナ・ノーグ伝説なんてこの際クソ喰らえで、トールキンがそんなにも想像力のない人だというのなら別だけれども、このラストは物凄い喪失感を感じました。
あと『新選組』by手塚治虫を思い出さずにはいられませんでした。

*1:エオウィン活躍とかオレファントに乗ってる黒人はなぜオーク側についたかとか

*2:トーマの呪い