新選組!第11話…だっけ?

多恵子タソとは関係なく凄く気に入った回。今まででは当然一番。前回はいきなり近藤が尊攘になり違和感を隠せなかったが、今回の母息子の物語は母子葛藤モノとして97点くらいはあげられる出来であり、大変素晴らしい。
まさかこんなにディープな母子モノを大河で伏線張って一話分くらい使ってやるとは思わなかった。
 
母子問題の恐ろしさとは、子の異質性を受容できないことではなく、子の同質性を受容できないことである。
人は時折自分と異質な人間を排除したがる。だが母子間にはその異質性以上に同質性(考え方、容姿、話し方、人生)があり、それが正の同質性(高学歴やら美形やら)なら問題はないが、負の同質性であった場合、母は自分の負の部分を受け入れない代わりに、子供の同質性を否定する。自己の代わりに子供を否定するのだ。さらにその負の同質性というのは個人によって大きく変わる。そして往々にして母側はその自己嫌悪をはっきりと自覚できていない。
イグアナの娘』はまぎれもなくそういったことを書いた作品であるのに*1大塚英志はそれを読み取れなかった。『彼女達の連合赤軍』での大塚のイグアナ〜批判から繰り広げられる出産本ブーム、そして母胎の「異物(母性と胎児)の受容」。イグアナ〜が描いているのは異物の受容ではないのだが、大塚氏は誤読している。
そういった点で、武士の家に貰われてきた農民の子、という全く同じ立場ゆえに勇を憎む母の心境というのは、私には非常にストレートに理解できたし、また母が勇に「数々のご無礼をお許しください」と泣いて許しを請う場面は、涙が止まらなかった。母は無自覚に目を逸らそうとしていた勇と自分の同質性を、もう一度見つめなおすことで全てを氷解させたのだ。素晴らしい回であった。

*1:母親は自分にそっくりな長女がイグアナにしか見えない