フルーツバスケット(13) 高屋奈月(ISBN:4592178831)

ネタバレありです。
買うのは恥ずかしいのでいつも通り妹に賄賂を渡して頼みました(笑)。
えー、個人的にこの漫画、苦手です。好きな方ごめんなさい。以下読まないほうが良いかも。
 
読んでる途中に恥ずかしくて本を閉じてしまうなんてフルバとNANAくらいですが、その回数はフルバ圧勝です。まず開始五ページ目の由希のアップでげんなり…この漫画、一筋縄ではいかないわね…。そして本編、のっけから「総てが色を無くしていく」なんてモノローグに、こっぱずかしさに本から目を逸らしてしまいました。さらに(以下エンドレス)…とにかく由希が苦手で、綾女が出てきてかなりほっとしました。不幸比べをしちゃう気持ちはわかりますが…。
この漫画、ぶっちゃけ私にはページ内にぼこぼこ「ここで萌えて!」って看板が立ってるのが見える気がして苦手です。話の本質はいいんですが、くどすぎるモノローグ、多すぎる人物、ウザい主人公、そしてその主人公にスクール水着を着せる作者と、どうもわたくしと相性がよろしくないのです。テーマはよさげなので、海とか行かずサクサク進んでいればもっと好きになれたのでしょうが…実際6巻までは名作だと思っています。

この話やめろよって感じかもしれませんが、AC話をば。苦手な人は逃げて。
由希も夾も、ACであることに異論はないかと思います。私が由希よりも断然夾派である理由は、二人の描かれ方の問題。由希は、今巻で母親との関係が描かれていますが、あまり感情移入できない設定なんですね。由希の母親は、由希を道具扱いしていて、進路を勝手に決めたり当主に取り入らせたりしますが、これは本当にわかりやすい悪役ですよね。でも実際日本で多いのは「お母さんはあなたの為を思って」系だと思うのです(実際いくつかの著作にそうありました、手元にないため詳細不明)。日本のACは「いい子」が多いと言われますし、由希君は実際それなんですが、理由と回復方法がまったく異なります。今巻、由希君は自分の意志を表明することで母親の道具から脱出しようとします。しかし、この母親が自分の利益の為に由希君を道具扱いしている場合有効なこの手段は、「子供の為に」と思っている母親にとって、ある種の脅迫めいたモノになってしまいます。「私はあなたの為を思って言っているのにわかってくれない」になっちゃうんです。ここには、母子の同一化願望や親の償いとしての子、母に向けられる世間の目(ここにフェミニズムが関わることも)等が複雑に絡み合っていてややこしいんですが…とりあえずこの二者の母親の違いは、お分りいただけたものとして、後者のあなたの為を型には自己主張がかえって逆効果だったりします。現実はややこしいっす。んで、そんなわけでそもそも感情移入できないのに、その悪役ママンを許そうとする由希が更に理解不能なんです。後者のあなたの為を型なら、私の為に言ってくれてるんだしという気持ちがあるのは理解できるのですが…。由希君の描き方が「間違っている」とか言ってるんじゃないですよ、ただ感情移入できないということ。
それに対して夾君は私と気が合うと思います(あ、私今けっこーキモいこと言っちゃった♪)。今巻半ば、主人公が「願いは生きてるかぎり生まれ続けるから諦めないで」というシーンがあるんですが、私はそういうの、
「願いとかおキレイに言っちゃって、欲望だろケッ」
みたいに思うヤな奴なんです。そうしたらその後夾君が「ウザイ 何一人で願望(ゆめ)抱いてんだ 俺なんかに」と女の子を振っているのを見て、あぁ、気が合うなぁと(笑)。その他母にも父にも疎まれて、あげく多くを望まない人間になっちゃったところとか、マージナルな存在で十二支に仲間入りしたいけど同時に十二支を見下してるところなんかモロに感情移入してます。がんばれキョンキョン
噂の猫寄りシーンでは看板が見えていたにも関わらずフツーに萌えてました。罠にはまる私。でもこれって、女の読者さんは「自分ならこっちと付き合いたい」という方を応援してるのですか??私はただ夾が幸せになって欲しい一心です。レヴィも同じく。
実は、あの主人公がどっちかとくっつくとどちらかは不幸になるので嫌だなぁと思っていたのが今巻解決されたように思えます。それは由希が副生徒会長に心を許し始めているという理由からです。実はかのエヴァでもアスカ(AC)が最終回、シンジの世話焼きの幼なじみと表現されていてAC回復の可能性が示されていました(このページのアスカの項、負ける体験を巡って参照)。同じように、由希君も世話焼きすることで、彼の短所が長所にかわる可能性があるかもしれません。
というわけで心置きなく夾を応援します。