日本人の話

私がイギリスにいて耐えられなかったのは、食事、風呂、そして日本人でした。日本人は学校の3分の1を占めていましたが、特に一番下のエレメンタリーは2クラス12人中10人が日本人だったようです。つまり私たちはやはりヨーロッパ人に比べて話せなかったのでした。しかしこれに関しては私は自分を最初の悪例に挙げなくてはなりませんが(ちなみにエレメンタリーではないです)。同様に、あまりにステイ期間が短いのも日本人の特徴だと言われました。それに、日本人は大学生の、しかも女が圧倒的に多かったのでした。
全て、私に当てはまるものです。
では私を苛立たせたのは?それは日本人のあまりの教養のなさと、日本人だけで固まること、そしてその日本人っぷり全てでした。まず教養のなさについては、前にも書いたとおり、彼女らは美術館に行きたがり、ミュージカルに行きたがるのですが、それは折角ロンドンに来たから一度は見ておきたい、というだけで、日本で美術展やミュージカルはおろか、美術館や劇場にすら足を運んだことがないのが明白なのでした。文学部の学生たちは、不勉強な私にも増して本を読まず、ヘッセもサリンジャーもディックも読んだことはなく、かといえども村上春樹のファンですらなかったのでした。そういった無知に耐えられないのは私の非でもあるとはいえ、まったくそういった人間と共に行動するなど日本では考えられないことで、そのたびに私は不快な思いを感じずにはいられませんでした。さらにしばらくすると、私は「観光気分」とでもいうべき日本人の特徴に気がつきはじめました。昼食の時など、他の人々が散らばって英語で話しているのに、日本人は固まって日本語で観光の話ばかりしているのでした。そして、学校のプログラムでクラブに行くとなると、「一人じゃ行けないからこの機会に行く」、と固まって来るくせに、決して踊らないのでした。日本人がフロアの端っこでチビチビとアルコールを飲みながら、踊る人々を横目に日本語で話しているのを想像できるかと思います。向こうのダンスには決まった型などないので、下手も上手もなくみんな楽しく踊っているのに(当然私も)、日本人はいつもそういうシラけさせることをするのです。そしてパブに行ったとして、例えば30人中10人は日本人だとします。夜の12時を過ぎても残っている日本人は2人だけです。8人は門限がどうたらといって帰ります。一方外人は20人18人は残っています。「どうして日本人のステイ先だけいつも都合よく門限が厳しいのだろう?」と思わずにいられないのです。もう一人残っている日本人は言いました。「俺いつもこの時間日本人一人だもん。こっちはパブとかクラブっていうのが夜の文化なんだから、言えば残れない訳がないのに、要は残りたくないんだよ。」
ま、いたとしてもどうせ日本語で話しているだけなのでしょうが。
こんな大陸挟んだ向こうの島国でも、本音と建前という文化を健気に守っているようです。