イヴの眠り 吉田秋生 2巻&3巻

3巻面白いです。オススメ。
やっぱり吉田秋生はこうくるかって感じ。昔大塚英志が母性との和解みたいなことを言っていたけど(おいらはどうも疑わしいと思う、少なくとも少女漫画を引き合いに出すのは)、むしろ今ここで父性との和解が進んでいるのを見せられているんだなと確信した。
少女漫画のいいところはループしないで前進していくところだと思う。じゃあそうやって父性を獲得して恐ろしいことにならないのっていう問いは萩尾望都がもう『残酷な神が支配する』でやってるので、ループしない。今回の吉田の『イヴの眠り』はじゃあ父親に恋したらどうなるの、父親と一体化したらどうなるのっていうことで、これは萩尾望都があの長編を終えた後『バルバラ異界』で初めて父親を主人公に据えたことと奇妙な合致を見せる。私は〈非少女〉性というのはとどのつまり父性を志向するんじゃないのかと思っていたので、この手の実験は大歓迎だ。ついでにここに『少年魔法士』のパパ代表、レヴィ・ディブランも加えてしまえ。おりゃー
 
何故〈非少女〉性が父性に向かうと考えたか、話すと長いんだけど、それは去年の年末あたりに考えてた少年出産史と重なるもので、ようは少年に出産させようとする存在=作者って誰なのよ?という問いの答えが、メイヤード様であり、グレッグだったというだけの話。メイヤードは父親父親してないけど。説明省略。
 
そんなこんなで『イヴの眠り』ではまたあたらしい挑戦が行われているのをまじまじと見ることができる。というより従来とは違った父娘関係をいかにして築くかみたいなのを模索している感じがする。それが健康かどうかには興味はないんだけど。あと冷徹で人を殺すのに何も感じない美形が特殊能力を持った主人公にだけ愛を注ぐというのは懐かしの『妖しのセレス』と似ていると思った。あの漫画はおわりかたがあまりよくなかった。