ラストについて(思いきりネタバレを?)

以前にも書きましたが、私は『ファントム・オブ・ジ・オペラ』のラストを見て「なんて残酷な終わり方!」と思いました。それはもう、とても残酷で、劇中で人死にが出るなんてのとは比べ物にならないくらいの残酷さなのです。こんなこと説明したくないですが、あえて理由を書くなら「闇に生きる哀れな怪物、どんな人生を知っているの?」といいながらクリスティーヌが教えたことは、この世には愛があることという希望、そして同時に彼はそれを手に入れられないという絶望だったからです。だからこのラストを無償の愛とかいう汚い言葉で片付けないで欲しいのです。ま、実際見た時はもっと入り混じった感情がブワっと来て動けなくなったんですけれども。
ネタバレ警報 ↓
ところが映画版ではもっと救いがあるように感じたんですね。それはひとえにバトラー氏の演技のお陰だし、映画だから細かい表情がより理解できたというのもあるんですけど。とにかくミュージカル版を見た時は、最後までファントムがAll I Ask Of Youのリプライズでしか愛を表現できなかったことが気にかかってしまったのですが、映画では搾り出されるようなその言葉の重みをしっかり受け止めることができたような。
ただ、今回それがなっちこと戸田奈津子訳よって少しわかりにくくなっているのではないかと、ちょっと心配しています。なっちの字幕、You are not aloneに余計な解釈付け加えてしまっている気がして。確かにクリスティーヌはファントムに惹かれているのですが、惹かれていることを示したってどうしようもないと思うのですよね。二人は孤独な人生を音楽の才能と共に生きてきた似たもの同士なのですが、クリスティーヌがファントムと一緒にいると恍惚状態でいいなりになってしまうのは、彼の音楽の魔力に見せられている所為であるのがまずありまして、それで、「歪んでいるのはあなたの心」とか、「憎しみの涙に変わったわ」のステップを経て「でもあなたは独りではない」という境地に達するわけで、惹かれているけれど、一緒に行くことはできないという前提の上に、あのラストは生きるのだと思います。
パンフの監督のラストの解釈は、「ファントムは同時に深く傷ついた」というもので、ちょっと監督さんと酒を飲みたくなりました。ちなみに監督の撮った映画は『フォーン・ブース』しか見たことがありませんが、とてもいい映画でした。レポ書いた気がします。