ダイアローグ イギリス製ナイフ版

ほぼ初対面のイギリス人とばっちり2時間くらい話していました。ものの見方が面白かったです。雰囲気はジョシュ・ハートネットに似ていると思う。汚い顔ではないのになんとなしの外人特有のダサさがあります。しかし23くらいに見えるのに同い年だと発覚。スイス人が25と見た老け顔の私も、同い年の彼にはさすがに若く映ったらしくお互いあっけにとられ「年下に見えるよ」「そちらこそ年上に見えるよ!まさか同い年だなんて」とびっくりしあった。正確には彼の方が2ヶ月半若い(!)。
「えーっと、ブリテン出身なんだっけ?イングランド?」
「そう。イングランド
「わたしもイングランド行った事あります、ロンドンだけど。そんでイギリス人の発音が好きです」
「へー。僕はもっと北の方、ノースイングランド出身なんだ。すっごい発音が汚いところ」
「あはは。あ、でも(プロパーじゃないって)分かります。ロンドンの発音とは違うなぁって。って、ロンドンはロンドンで――特有の言葉があるけど」
コックニーっていうんだよ」
「あ、それ。Hを発音しないっていうやつ。」
といってコックニー言葉で話し続ける私たち。
「あなたはどっちの英語を話してるの?」
「私?私は……いちおうアメリカ風和製英語を話しているつもりなんだけど(笑)」
「なんだそりゃ?」
「いや、その、学校ではアメリカ英語を習うじゃないですか。でも私は先生がイギリス人で、イギリスの言い回しも少し分かるんです。たまに使うのは、コンビニにpop over(ちょっと立ち寄る)しなくちゃ、とか。かわいいんで。あと、服とか車は紛らわしい。私、車なんか、日本語ではアクセルだから、accelerator(英)って言って、gas pedal(米)とはいわないんだけど、逆にトランクなんかはtrunk(米)と言ってboot(英)とは決して言えなかったりする。」
「たしかに発音はアメリカ風だね」
「マジですか?アメリカのドラマで勉強したからかな?でも日本で英語を教えるのは凄くいいアイディアだと思う。日本語の発音に近いから」
「そうなの?」
「Rの発音なんかが米語より発音しやすいんですよ」
 
「その、コメディとかを見て、理解できるの?」
「あ、好きですドラマ。フレンズとか。あと24も。そのままじゃ理解できないけど、英語字幕があれば」
「24はコメディじゃないよ」
「あ、そうだ。多分、字幕さえあれば楽しめると思いますよ。チャンドラーが好きで」
「ああ、チャンドラーね」(※ヘタレ系ゲイに間違われるキャラ)

「ところでなんで日本に来たんですか?日本語も少し話せるようだけど、独学?」
「いや、大学で1年間」
「いちねんかん!私が英語を何年勉強しているかわかります?」
「……あえて予想しないでおくよ」
「予想嫌いですよねー(年齢の時も同じコトを言った)」
「いや、嫌いじゃないんだけど、とても長い間でしょ?で、何年勉強しているの?」
「大体10年くらい」
「10年!」
「でも始めは中学校と高校で、6年間学びますよね。その後英語をやめちゃったんです。大学入試に必要なだけだったから。それで大学でも10くらい英語の単位を落として。でも去年ロンドンに行って、やる気を貰って、9月にもう一度始めて。」
「僕もフランス語を6年やったけど、さっぱり駄目だね」
「フランス語は難しいです。私は大学では賢明にドイツ語を取ったので。全く話せないけど。英語は簡単な部類なので、何とかなったんですが」
「いやー、でもいざ英語を教えてみて、英語がどれだけ難しいか痛感しているよ。生徒が間違えた答えを言っても、何で間違っているのかわからない。ただ僕らはそう言わないってだけで。」
「それならなんでまた日本語を勉強したんですか?難しくて、役に立たなくて、しかも日本ってつまらなくてあなたの国からも遠い。」
「うーん、それは一つの見方でしかないよ。すごく興味深い言語だよ」
「たしかに興味深いかも知れない。話している私ですら文法さっぱり分かっていないから」
「元々生まれついてしまうとその言語の文法は分からないよね。多分僕は君に日本語の文法を教えて、君が僕に英語の文法を教えられると思うよ」
 
「それで、日本はどうですか?」
「面白いよ。初めて住む外国だし」
「行った事があるのは?」
「最初に行ったのはオーストラリアで、それからフランス、イタリア、アイルランド…」
「オーストラリア?そりゃまた遠いですね。何故わざわざ行ったの?」
「ああ、父親がオーストラリア出身で」
「ああ、だからあなたの発音が……」(墓穴)
……
「あ、すみません……」
「いや、僕の父親はイングランドの大学に行ったから、オーストラリア訛りはない(笑)。それで、母の出身地で僕は育って、しかも今はスコットランドの大学に行っているって訳」
「ぐちゃぐちゃですねぇ」
「そうだね。日本にいて、教えていると、よく生徒の答えにビックリさせられるよ」
「どういう意味で、ですか?英語が下手だとか?」
「いや、僕の母親はフェミニストなんだ。で、女性は家庭と子供を持っても社会に出て働くべきだという考えだったから」
「へぇ(日本では絶対にありえない会話だ…)。わたしも似ているな。なんせ文学部だから、その手の思想は勉強したし、働きたいし。でも日本の女性は保守的ですね、概して」
「だろ?僕が一番ビックリしたのはね、授業でこんな質問をした時だ。『最近の若い日本女性についての意見は?』そしたら彼女何て答えたと思う?日本女性はassertiveになってきている。それは良くないっていうんだ。」
「assertive?」
「ああ、もっと自分の意見を持っているってことだよ。それで、どうしてそれが良くないのかって尋ねたら、彼女こう言ったんだ。『日本女性が自己主張するようになっているのは良くない、何故ならそういう女性を外国人は好むから』
「ええっ!?」
「『外国人が好むからそれは良くない』って!ビックリしたよ」
「多分英語が上手くなくてそんな訳わかんないことになってしまったのでは!?」
「いや、違う。それこそ正に彼女が言わんとしていたことだったんだよ。本当、日本人が興味深いと感じるのは、僕が日本人を理解することが出来ないからだと思うよ!
 
文字に起こすと口げんかしてるみたいですが、仲は悪くないです(でもアングロサクソンに興味のないあてくし)。この微妙なズレを見よ!