ビリー・ジョエルのミュージカル、Movin' Outを見ました

なんか長いからウルトラCでまとめてみた

『オネスティ』は親しみがある分あつかいやすいし
素人から玄人まで幅広く知られているビリージョエルの基本楽曲
対して『グッドナイト・サイゴン〜英雄たちの鎮魂歌』はぱっと聞きなんかは他の曲とほとんど変わらねぇが
あえて売れない様にキャッチーさがない分
硬派度と真剣味をかなり増加させて
売れるより残ることを目的とした玄人好みのあつかいにくすぎる曲
歌いこなせねぇとナマクラアーティストより弱いただのクズみてぇな曲だってのに
何であのミュージカルは?

おおお使えるなあ(元ネタ


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ウェブサイトがなんで3つあんだ。後ろの2個はTBSのだからスクリーンショット取れなかったみたい。でも検索ではこのTBSのが上にくる。左から、「オフィシャルサイト」「公式ページ」「公演情報」という位置づけらしく、たらい回しにされたよ。


さて、今来ている「ウエスト・サイド・ストーリー」よりも長い1ヶ月超という異例の超ロングラン。『マシュー・ボーン白鳥の湖』みたいな、いかにも日本人受けしそうなホモくさいアレならともかく、ビリー・ジョエルを舞台の上でカバーしているオッサンにあわせて台詞ナシのダンスがひたすら展開するというあまりにニッチな作りには見ているこちらがビックリ。そりゃ、ダニエル・パウターとか流行ってますよ。かつては、ベン・フォールズ・ファイブが一番最初にブレイクしたのは日本だ、みたいなこともありましたよ。でもそれですら、何時の時代やねんとか無情な突っ込みを受けそうな今日、元祖ピアノ・マンが一体どれだけの興味を惹き付けられるのかはビミョーに疑問です。
そんでもって日本人が知っているビリーの曲といえば、まず『ピアノ・マン』と『オネスティ』があがると思うわけです。その後に『アップタウン・ガール』『素顔のままで』『ムーヴィン・アウト』とかがくるのでは(同行者はこれらの曲を知らなかった)。ちなみに、友人に熱狂的ビリーファンのイギリス人がおり、カラオケに行ってはビリーを歌っていたのですが、『ザ・ロンゲスト・タイム』とか誰も知らなくて落ち込んでました。
でね、何が言いたいかというと、このミュージカルには『ピアノ・マン』も『オネスティ』もないんですよ。Such a lonly stage! なんか何もかもが微妙すぎるんですよね。
個人的には、女性2人のラテン・ダンサーとジュディ役のローラ・フェイグ(LAURA FEIG)というバレエ・ダンサー(色々な出身のダンサーがいる)は素晴らしいと思ったのですが、それならラテンやバレエを見に行くわなぁ。大半を占めるコンテンポラリー・ダンサーは、悪くはないんだけどソロが一本調子で、とくに男性は、ジュテはめちゃめちゃ、ピルエットはいつも倒れこみそうになって終わる、などなどかなり厳しいものがありました。それはお前のバレエ脳だ、と言われればそれまでですが、じゃあ「ただ飛んでればいい」「ただ回数まわればいい」のかといわれると、それは違うでしょう、とも思う。最初に主要メンバーが出てきたときは、「わざと60年代風のダンスをしているのだな」と思っていましたが、どうもそうでもなかったようで、目新しさもなく、アカデミックな基礎を感じさせるでもなく、本当に微妙でした。
おまけに言ってしまえば、群舞がつまらないのも致命的。あえて言うなら、ペア・ダンスは悪くなかったのですが、後ろにいる群舞がペア・ダンスと全くシンクロしていないため、バラバラな印象を受けます。群舞といえばロビンスですが、『ウエスト・サイド・ストーリー』は主役の女性が下手だという話を先に行った人から聞き、ちょっとまだ迷っているところです。数年前見た、NYCBバージョンはすばらしかったのですが(つまり、歌よりもダンスがきっと重要なんですね。私にとっては)。


と、酷評から入りましたが、それでも舞台が好きならそれなりに楽しめるところがあります。私は宣伝に出ているイケメン・ピアノマンのダレン・ホールデンではなく、マシュー・フリードマン(MATTHEW FRIEDMAN)というWキャストのハゲのオッサンでしたが、彼は素晴らしかったです。個人的には、ビリーよりも声質が高くて好きでした。アンコールで、ピアノ・マンのさわりだけをやったとき、あともう少し金を払うから続きをやってくれ!と懇願したい気分になったほどです。
それと、前出のバレエ出身ダンサーが踊る『素顔のままで』はとても美しい振り付けでした。相手がバレエ出身ではないため、ひとつのモダンなダンスとして完成しているのが面白かったです。また、ビリーの作品の中ではあまり有名ではないけれど、ベトナム戦争を題材にしたものがストーリーの軸となっているのが非常に興味深いです。私はあまりベトナム戦争のことを知らないし、それが芸術作品に与えている影響もあまり知らなかったのですが、ビリーは何曲も退役軍人にまつわる曲を書いていると知り驚きました。「そして僕たちはみんな死んでいく」と繰り返すコーラスはとてももの悲しく美しかったです。


念のため、ビリー・ザ・ヒッツを聞いてから行ったのは正解でした(家のCD棚をみたらビリーが勢ぞろいしていてビビった)。とりわけ『ムーヴィン・アウト』はいい曲ですな。ただし、『ピアノ・マン』や『ムーヴィン・アウト』の歌詞を訳している山本安見さんという方は、「ノルウェイの木材」を「ノルウェイの森」と訳した誤訳で有名な方で、この2つの歌詞も何をどうやったらそういう風になるのかわからない対訳になっていますので、決して参照してはなりません。とくに、『ムーヴィン・アウト』の対訳は過去見たなかでも最低レベルです。指摘するのも馬鹿馬鹿しいほどです。


こんな風に、長い期間来てくれるのはありがたいのだけど……な1本。