Dearフランキー Love your own brown bread world!

Dear フランキー [DVD]

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そんなジェリーが好き。以上。


ジェラルド・バトラーは良い役者だし、この映画がImdbで高い評価を受けているのも知っているけれど、障害者の少年とジェリーのほのぼのな交流なんて見たくないよ、最近の難病ものじゃあるまいし、みたいな深層的理由から、なんとなく見ていなかった作品。「泣かせる」映画と分かって泣く映画を見るのって趣味じゃあないし、映画ごときで泣こうって体力も気力もない。かといえども「癒し」が欲しいわけでもないんだよねえ。みたいな超ひねくれだったんだけど、WOWOWでやっていたのでついに見てしまった(実は今日もやっていたんだけど、今日ではない。私は、映画を数回見てからレビューを書くようにしてるので、遅くなるのだ)。


泣き笑ったよ。


ジェラルド・バトラーは偽の父親としてちっとも完璧ではない。レザーのジャケットを羽織った坊主の大男が最初に出てきたときはどこのヤンキーかと思った。怖いよママン! ただ、それはジェリー演じるストレンジャーがちょいとばかし不器用だからなんだな。そしてジェリーのファンは嫌と言うほど知っている筈なんだ、不器用な男を演じさせたらこの男の右にでるものはいないって。だから、一度ばかし彼がスクリーンの中でアンジェリーナ・ジョリーを口説いた時にはわが目を疑ったものだ。ジェリーといえば、振られるか死ぬかの2択しかないと思っていたからだ(もちろん、最後はアンジーにも振られるけど☆)。
別れた夫から逃げるフランキーとその母&祖母の3人は新しい町にたどりつく。難聴のフランキーは学校で上手くとけこめないが、その描写はとても淡々としており全く不快感を感じさせない。母は、フランキーの声を聞くために、父親を船乗りと偽り、さらにその父親として毎月手紙を出している。ところが、彼らが引っ越した先に父親が乗る船がやってくることがわかり、困りかねた母は父親役を探す。
なんで引き受けたのだか良く分からないジェリーは、フランキーと会うなり戸惑いまくり、舞台であるグラスゴー特有のひどい訛りで「You got big(大きくなったな)」と声をかけるのだが、これが「ユッゴッビッ!」と喉に何かつっかかっているようなふしぎ発音。このように全編でこの男はチャーミングな魅力(?)を振りまきまくり、見ていて非常にほほえましい。そんで泣ける。


多分、この作品はバランスがよいのだ。過剰も不足もない。奇跡もないが、失望するような厄災もない。たとえば、フランキーは難聴だが、非常に頭が良いし読唇術も出来る。子供特有のウザッたさも、障害者として描かれる重たさもない。
ストーリーもそうだ。何か大きなイベントが起こるわけでもなく、淡々と進んで淡々と終わる。もちろん、最後にひとつだけちょっとご都合のよい出来事があるが、それも登場人物の、「こんなこといっちゃなんだけど、これで全て上手くいっちゃったわね」という言葉とともに、また日常へと還元されていく。誰だかわからなかったストレンジャーの正体すら、最後にはアッサリと明かされる。


それにしても、グラスゴーとは本当にこんなに茶色い街なのだろうか? とにかく画面がブラウンだ。美しくもあるのだが、同時に退屈そうで地味でもある。ただし、唯一、母親が木漏れ日あふれる美しい街道を走るシーンがある。それは、見た目の美しさとは裏腹な必死の逃亡だ。目の前のブラウンな世界を愛するためのちょっとした想い出、それがフランキーと父親の2日間だった。


スコットランド語萌えが加速する1本。日記タイトルはUptown Girlの歌詞のもじり。