すでに20回は見た 『Rent』ファンはDVDを買うべき!

lepantoh2006-10-20

1980年代後半、ニューヨーク。Rent、家賃すら払えない芸術家たちの集まるまち。しかも、今年の家賃ですらなく、去年の家賃! そんな人々は、偏見と、エイズと、貧困と闘いながらその日その日を全力で生きていた、というお話。メインテーマは、NO DAY BUT TODAY(あるのは今日という日だけ)。
なんてこったい。わたしはわたしの余生を漫画『少年魔法士』とバレエ『ロミオとジュリエット』とミュージカル『オペラ座の怪人』を読んで見て聴くために生きるのだと思っていた。『Rent』はそれを過去にしてしまった。もう『Rent』なしでは生きれない! 朝起きて一番最初にすることは『Rent』のDVDを見ることで、寝る前にするのも『Rent』を見ることだ。DVDを買う前は、「You Tubeで全部見れるしいいか」とか思っていたけど、やっぱり大きい画面で見るのはいいし、特典映像もナイスだし、監督のコロンバスとマーク役のアンソニー・ラップ、そして我らがロジャー役のアダム・パスカル3人が副音声で解説してくれるのも最高に面白かった。DVDを買ってから、異様にハマってしまった。ほんとうにすきなんだ。
I believe this explains all(見たことない人用)。オープニングより、"Seasons Of Love(3分22秒)"を。

差別的な自分に気付かされてくれるメディアが好き

最初にRentを見て気付くのは、連続して自分の予想を少しずつ裏切る描写が出てくることなんですよね。最初にトム・コリンズという黒人を見たときは、私の黒人でガタイでっかい人への穿ったイメージから、アジア系に見えるドラァグ・クイーンのエンジェルとは相容れないのではないかと咄嗟に思ったんですが、実際はみんながその存在を受け容れる。それと、ライフ・サポートというエイズ患者の会があるんですが、そういうものの描き出し方も私の想像と全く逆だったし、レズビアンが婚約披露パーティーを開く際は「けしからん!」みたいな声が上がって問題になると思ったら、そんなことなかったしね。
主要な人物のうちカップルが3組あるのですが、全て人種が異なるカップルで、しかもヘテロ、ゲイ、レズビアンカップルが1組ずつなんです。すごくクィア。いや、言ってしまえば「あまりに」クィア。監督の解説では、ゲイのキスシーンが許せなくて席を立つ人もいたそうですから。
ただ、本当にこれだけは絶対誤解しないで欲しいんですが、私は『Rent』を見てゲイへの偏見をなくせとか人種への偏見に気付けとかは絶対にいいません。だって私が偏見持っているから。それに気付いた、という提示だけはさせてもらうけれど、この作品はそんな、「説教臭い作品」ではないんです。ただ、ニューヨークの1980年代後半の芸術家を描いたらそうなった、というだけで。
誤解をおそれずに言えば、私はこういう自分が差別的だと気付かせてくれるメディアが好きなんです。わたしは世界のある紛争地域に関心を持っていますが、それは自分が日本的な常識の中で生きていると気付かせてくれるからなんですね。

マークだらけの特典映像で謎が解けた&「もう一つのエンディング」はヤバイ

ところで、わたしはRentをロジャーの物語として享受してしまったのですが、それはマークの主要な歌がカットされていたからでした。特典映像には、マークが常に傍観者で、独り身であることを嘆くソロと、ロジャーとそのことで言い合うシーンが収録されています。そうか、気付かなかったけどマークもすごく悩んでいたんですね。
ちょうど"What You Own"の前に挿入される2曲がカットされているので、What You Ownが別の意味を持って聞こえます。とくに、マークは目が悪いけど、エンジェルの声が聞こえるから自分だけの映画を作る、ロジャーは耳が悪いけれど、ミミの姿が見えるから曲を作る、という歌詞にはしびれたなぁ。
それと、ベンジャミンは逆玉の輿になったはずなのに、ミミと付き合っている疑惑が出るのはどうして?と思ったのですが、その点もロジャーとベンジャミンのシーンなどが収録された点でカヴァー。結局ロジャーの早とちりみたいだったです、嫉妬イクナイ。

解説で一番面白かったのは婚約パーティーのモーリーンの解釈

たしかこれを言っていたのはマーク役のアンソニーだったと思いますが……「モーリーン役のイディナと親しいから分かるのかもしれないけれど、イディナの細かい演技がモーリーンの結婚への不安を表している。煽るような乾杯、キスの仕方、それにこのキスを拭う仕草……」というのはかなり新しい発見でした。そうか、モーリーンは口ではそういいつつもやっぱり結婚したくない気持ちも半分だったんだなぁと。
そのほか、「ここではこんなトラブルが……」「××を撮ったんだけど良くなくって……」「この衣装を取り替えたい」「世紀の美女エンジェルにひげが……」「二重アゴだ。ハリウッドで手術しようかな」など面白裏話も満載。DVDにたまに入っているのは知っていましたが、解説は初めて聞きました。面白かったです。
ただ、いまだに謎なのは"Light My Candle"のラストシーン。あれ、ロジャーはミミのヤクを隠し持っていたんでしょうか。それともミミがロジャーの分を盗んだ?

ひきこもりロジャーのものがたりだよやっぱり

なんだかんだでやっぱりロジャーが気になって仕方ありません。アイシールド21の桜庭春人的気になり方。
そういう意味で、Out Tonight→Another Day→No Day But Todayの流れが一番好き。ロザリオ・ドーソンはいいケツしているし*1

シンガーとしてはテイ(ベンジャミン)、役者としてはジェシー(コリンズ)、役柄としてはエンジェルが一番好きな浮気性。特に、エンジェルの人の懐への入りっぷりは本当に見習いたい! 最初にコリンズに声をかけて登場するところから、クリスマスにロジャーを誘うところ、ライフ・サポートでカツラを取るところ&マークに手をふるところ、↑のビデオのラストでミミを抱きしめるところ、ライフ・サポートでロジャーを歓迎するところ、サンタ・フェのラストでマークに笑いかけるところ、お店で「今日はお金があるもの。行きましょ!」というところなどなど、この人になら腹を割って何でも話せる、という空気が出まくっていて憧れです。
実はひとり彼女に似たゲイの人をひとり知っていて、この懐の深さは彼を思い出すところもあります。

ミュージカルは英語を覚えるのにも最適! Rentで使役動詞をおぼえよー

せっかくだから英語学習にも使っちゃえ、ということで好きな歌詞メモ。

Why Dorothy and Toto went over the rainbow (どうしてドロシーとトトは虹を超えていったの?)
To blow off Auntie Em (おばさんのエムをはねつけるため!)
La vie Boheme (芸術家万歳!)

サイコー! Not to mention of course, Hating dear old mom and dad(言うまでもなく両親が嫌い)とかもナイス。

Let He Among Us Without Sin (私たちのなかでは罪のない人間を)
Be The First To Condemn  (最初に非難しよう!)

自分の人生哲学と一緒だ。Letを使った構文もおもしろい。

I'll let you make me out tonight!(あなたに私を今日連れ出させてみせる)

Letつながりで、使役動詞を2連続で使っているのが印象的だったので。まさにOut Tonightをひとことで表すフレーズ。"When I used to go out(昔、外に出かけていた頃は……)"とか言ってないで、たまには外出しろよロジャー!

Don't forget get the moonlight out of your hair!

これまた使役動詞つながりで。Getは使い方が難しいです。訳すのむずかしいなぁ。その前に、髪の毛が月の光に光って綺麗だって歌詞があるんですよね。で、自分を誘惑するな、という意味で言っているんですが。直訳すると「髪の毛から月の光を取り去るのも忘れるなよ!」みたいな。日本語の字幕を確認したら「輝く髪もまっぴら」でした。うーん、それじゃあ「無茶いうなよロジャー……」って感じが伝わらないなぁ。Get your hair out of moonlightじゃあまったく何の面白みもないんですよね、この歌詞は。「髪に月の光があたらないようにするのも忘れるな」とかかなぁ。


もうひとつのエンディング、ようつべで見れるけど、買って欲しいのでリンクしない一本。いつみても泣いてしまう……本エンディングより好きです。

*1:でも彼女が『アレキサンダー』に山岳部族の娘として出演していたことを知りショックでした。まるで初恋の子がポルノに出ていたような感覚。彼女と知らぬ間にヌード見ちゃった……。