東京都青少年健全育成条例改正案と少女漫画について

東京都青少年健全育成条例改正案に対する私のコメントに対しては、大変聡明なコメントを頂き、サボりにサボってきた人間として、恐縮するばかりでございます。
あのコメントで投げかけたかった疑問は、こういうことです。

言い換えれば、少女漫画がどうなろうと、どうでもいいんでしょ?ってことです。あの時、誰も何も言ってくれなかった。それどころか、あれから何年もたっても、誰も何も言う人はいなかったわけです。


少し個人的に書きすぎたため、「エロの所為で面白い少女漫画が読めなくなったのが嫌だ」という風に解釈された方もいたみたいですが、果たしてそれだけなんでしょうか。
エロ少女漫画を読んでみれば、それがいかに男性向けエロ漫画のチープな模倣と、少女向けファンタジーの粗悪な合成品であるかは、すぐにわかると思います。たとえば“レイプ”に対する男性側のファンタジーと女性側のファンタジーは本来全く別のものであるはずにも関わらず、レイプを肯定的に、ある種の快楽として書く少女漫画がどれだけ多いか(ギリギリでヒーローがちゃんと助けに来てくれる場合も多いですが)。
またこんなこというと、大変に誤解されそうでアレですが、私はプロミスキュアスな世界観は大好きで、叶恭子のファンですので、そういう立場なら全く問題ないんですよ。また、モノガミストが背徳感を楽しむためにレイプ(ごっこも含む)や不貞を楽しんでも構いません。しかしそこには少女漫画的ファンタジーとして、心理上での彼氏への忠誠ってのは絶対なわけですから、そこへ男性的ポルノの粗悪品が組み合わさると、現れる表現はただのクリムゾンですよ。10代の子がそんな紋切り型のポルノ表現見てどうするんですかね? 私が少女漫画を読んで強烈に印象に残ったシーンは、レイプされてショック死しちゃったお母さんの息子とか、母親が背信的な不貞行為を楽しんでいるのを知って絶望する子供*1とか、そういうシーンだったんで余計に。
紋切り型の安物ポルノ少女漫画が発しているメッセージは、場当たり的なセックスに対する肯定的なメッセージであり、避妊の方法や女性の自立ではありません。
そういうメッセージ、世界観を見てきて、10代で妊娠しちゃった子がいたとしても、私は全然驚きませんけどね。
そしてその子がその後起こりうる教育・就業・収入・安定的結婚を投げ打ってまで、産もうと言う選択をすることは、ある意味で正しい選択だと思いますし(もうひとつの手段を否定しているわけではありません)。
このタイミングで言うのは卑怯ですが、心の中では当然、法案は否決されて欲しいと思っていると同時、今回の件がきっかけとなろうがなるまいが、一部の少女漫画誌にはその作品のあり方をもう一度考えなおして欲しいと願います。

*1:T.E.ロレンスとかレヴィ・ティヴランとか。でもレヴィは今回の規制対象バリバリですね。お母さんにレイプされてるから