その4.抜け切れない体、飛び出す翼

さてそんな超認識の下に作成されているREALですが、そこにもまだhydeの人間らしい感情を読み取ることは出来ます。すいません調子に乗りました。結局の話飛び出す歌がお好きな方もいらっしゃると思うので、好き嫌いの話はナシで。REALの中にも閉じ系な歌はあるという話ですね、それがa silent letter(とTIME SLIP*1)なのです。

指先にはもう届かない はるかな夜空へ/きらめく星をほどいて 放してあげよう
今日窓を開けたら 季節の足跡聞いたよ/あぁ君の仕種や笑顔が …僕の全てさ
Dear my love 遠い海原も渡ってくよ この腕で/嵐の日も二度ともう恐れはしない/Are you feeling 波間に見上げた/星の渦がきれいだよ

どうです、この空の使い方!この窓と季節の関係!このように、hydeの中にはまだ、古い世界観を引きずっている部分があるのです。そしてここで新たに注目すべきなのは、他のREALの空を飛ぶ歌詞と違いこの作品では海を渡っていくこと。スイスイ空を飛ぶイメージと苦労して海を渡るイメージは大きく異なっています。さてどちらにREALを感じるでしょうか。またここでは「波間に見上げた/星の渦がきれいだよ」といった、空と自分の対比が描かれています。
さて、ラルク詞の中で多用される海モチーフを今までほぼ取り上げなかったのは、ただ面倒だからです。海について考察している暇もスペースもない、ただしこのa silent letterは明らかに後のAnemoneにつながるものを持っています。そしてその前には確実に「ガラス玉」と「静かの海で」の世界観があると思うのです。「部屋の中で一人手紙を認める孤独」「あまりに広いところに、一人取り残される孤独」、この二つが見事に融合した作品が、a silent letterでした。
そしてClicked Singles Best 13の最後に、かの名曲Anemoneがひっそりと収録されるのです。
Anemoneは、スペインを彷彿させるフラメンコ調ギターにストリングスを絡めたスロー・バラード、歌詞は大航海時代風、そして何より海を渡っていく歌でした。

鮮やかな 季節あぁ 花が咲くのを/待つことなく 船はゆくまだ見ぬ場所へ
海を渡る 小船は遠く/願いをこめて 大地を求める

「あまりに広いところに、一人取り残される孤独」がやはりここでも描かれています。そしてこれはまた仮定の歌でもあり、「あぁ アネモネよ/あの丘を赤く 染めゆく頃にはあなたへと 旅立っている」、と結ばれてこの曲は終わります。
こんな良い曲を聴かされて、まだまだラルクを捨てるわけにはいきません。まさか42ヶ月もかかるとは思いませんでしたがねぇケッケッケ。

*1:季節に置いていかれる系