急に思いついた  抑圧者のいない異端児を如何にして救うかという問題

少年魔法士について、『蛆虫と蝸牛』(……あ、蛞だったかも*1)を書く書くといいながら結局書いていないのだけど、今日ふっと閃いたのでメモ。
わたしはレヴィ(少年魔法士)とゼーン(原獣文書)とあぎと(不死者あぎと)が好きなんだけど、彼らをひと括りにはできないと思ってきた。
たとえば萩尾望都なら、〈非少女〉〈白痴〉というナイフで作品やキャラクターを切り分けられる。一貫して描かれる無垢な存在の白痴性は、妹として*2、または弟として*3現れるとき〈神〉となり、姉として現れるとき*4〈苦手な人種〉となり、少年として現れるとき、〈救済者〉となる。*5。その一連の組み合わせを確かめた後、萩尾の矛先は再び〈白痴の母〉に向かい、『メッシュ』と同じことが起こる。
 
「母親の所為で/母親の為に息子はレイプされますが、母親にはそれを認識する能力がありません」これが萩尾が母を断罪する根拠になる。
 
少女漫画的な要素を少年漫画的に描くなるしまゆりの世界では、ワンピースのように、〈抑圧する悪役〉は存在しない。よって、全ての物語は倒すべき敵を持たない。あえて加害者を挙げるなら、〈愚鈍な集団〉である。神聖騎士団や新大陸の新人類に表される、ただでさえ特異な集団にすら、“天から能力を授かった”主人公たちは阻害され、〈異端児〉となる。天から要りもしない能力を授かった、異端の者たちを如何に救うか――これがなるしまゆりの、“吉田秋生的”主題だと仮定する。
その仮定に基づいた基本的なプロットはこのようになる。
 
「異端の集団からも排除される異端児に予期される死を回避するため、救済者が異端児に脱却を計らせ、その脱却者が救済者として、異端児を救う存在になるための物語」 
つまり、異端児*6→脱却者→救済者 として、脱却の対象を自分から他者に広げていく。これが出来ているのはレヴィ・ディブランのみ、しようとしているのがゼーン。あ、でもゼーンは自分の才能を恨んだりしないか。「俺にはその才能がある」といって無理するタイプだからなぁ。その仮定によってキャラクターは以下のように切り分けられる。

 
受難者の代表にローゼリットを置く。魔法士一巻で死ぬ不老の少女はメリーベルの如く異端児の未来を予見させる存在として、死ぬ。もちろん人王アークはその受難者の最たる者である。彼は倒されるべき悪役ではなく、人類の為の犠牲者であり、彼を疎むのは人類、尊ぶのも人類だ。もしくは未だ救いのないアルビレオ
脱却者はカルノ、勇吹、レヴィのおそらく全員。もちろんあぎと。
救済者はナギ(少)なろうとしているのはレヴィ、勇吹、そしてゼーン。多分レイ・ジーン。でもこの分類は何かおかしい。まず、分類を切り分けるナイフになんと名前をつければいいのだろう。さぁ、切り取るナイフが見つかれば、1年ぶりにアレが書けそうなもんなのだが。ああ、神様仏様ゼーン様!

 

*1:蛞蝓でしたワラ

*2:リーベル、ユーシー

*3:エリック

*4:『メッシュ』のビビの姉

*5:トーマやマーリー2、キラ

*6:=受難者と言い換えてもいい