岩明均のヒストリエ以外の作品(ついでだし)

そういや私、『風子のいる店*1』以外はとりあえず岩明均を制覇したみたい。私は『寄生獣』の後すぐ『ヒストリエ』を書いたのかな?って思っていたくらい、この作者さんのバイオグラフィーを理解してなかったんだけど、単行本の順序的には風子のいる店、骨の音(含デビュー作)、寄生獣、七夕の国、雪の峠・剣の舞、ヘウレーカ、ヒストリエっつーことになるらしいですね。ファンサイトが検索で出てこないんで、wikipediaでも参照してください。それでは、年代がわかったところで面白い順に紹介していきましょうか。

寄生獣(完全版)(8)<完> (KCデラックス)
私が『寄生獣』を読んだ時にはもうかなり手垢がついちゃっていて、青年漫画に対して無知だから買うときはすんなり買えたけど、今更語る気にはならないなーというド傑作。結構有名なブロガーさんとかmixiの中の有名人さんとかも好きな漫画に挙げてるので、そういう空気があるんだと思うけど、そんなのぶち破ってがんばって読んでください。そもそも大学教授に薦められて読んだし、ハリウッド映画にはなるしでメジャー街道一直線ですが、色んな見方が出来る漫画なのでみんなに愛されてるんでしょーな。私が購入したのはナイスな表紙の完全版。岩明さんが読者の質問に答えており、「最初は環境をテーマにしようかとおもったが、連載当時に比べて今は環境への意識がたかまったので切り替えた」的面白い発言をしていたうろ覚えな記憶アリ。あたしはヒストリエの方が好きです。

  • 2位 雪の峠・剣の舞(1巻完結)

雪の峠・剣の舞 (KCデラックス)
独断と偏見で次に面白いと思うのは2001年のこちらの作品(2004年文庫も出たらしい)。両方とも日本の時代モノなのだが、テーマはまったく別。特に必見なのは『雪の峠』。あたらしい藩の都をどこに決めるか、という藩内での知略戦は知的興奮を掻き立てます。

  • 3位 へウレーカ(1巻完結)

ヘウレーカ (ジェッツコミックス)
ヒストリエ的世界観で、一足早く世に送り出された『ヘウレーカ』。スキタイ人のダミッポスを主人公に、親カルタゴ反ローマ派に乗っ取られたシラクサを舞台として話は進む。ダミッポスの恋人はシラクサを愛すローマ人のクラウディア。だがローマ排斥に会い両親と離れてしまう。ダミッポスがクラウディアをかくまうためにつれていったのはかの数学者アルキメデス(ボケ気味)のところだった――という話。相変わらず城塞に関する記述が面白い。主人公に与えられた“攻撃的な出自”であるスパルタ/スキタイ、そしてラストのダミッポスの言葉など、今のヒストリエに繋がる部分が多く見受けられるのも興味深いところ。主人公はタレ目のイケメン。

ネオデビルマン (下) (講談社漫画文庫)
これは岩明ファンでも逃している人もいるかもしれないですね。順位的に入れるとしたらこれくらいでしょう。デビルマンはなんとジジイ。人が打たれる切られるの岩明節は健在。なんだけど、作品としての魅力はなんつーか、ま、一言でいって地味な作品。でも、味はあるから不思議なんだよなー。ところで、これは文庫版で買いましょう。黒田硫黄の最高傑作(かもしれない)『ゼノンの立つ日』がついてきます。田島昭宇がご自慢の画力だけを武器にオマージュのみで作品を構成することしかできなかったのに対して、圧倒的な書き込みでオリジナル・ストーリーを展開する硫黄の筆。一石二鳥とはまさにこのことでしょう。

  • 4位 骨の音(作品集)

新装版 骨の音 (KCデラックス)
岩明さんの初期作品ということで、岩明さんが「身体感」というものに執着をもっているものの、まだスプラッタに行き着いていない感じが非常に良いです。内面的にウジウジしている感じ。

  • 5位 七夕の国(完全版全2巻 単行本全4巻)

テーマみたいなものは掴めなくはないのですが、話の説明不足によって作品の完成度を大きく下げている謎の作品。岩明均ともあろうものが、なんでこんな作品を……と思わざるを得ない。キャラクターの魅力もほぼゼロ。数日前に読んだばっかりなのに誰の名前も覚えていません。「窓を開けた者」は何を見ていたのか。なぜ「手が届くもの」はカササギ化するのか。そういうところが読者としては知りたかったっす。
『風子のいる店』に関しては、暇があったら読みたいなーとは思ってるんですが、この人はお世辞にも日常生活とか学園生活を描くのが上手いとは思えないので*2、あんま興味ないっていうのが本音です。ヒトにお薦めできるのは『寄生獣』と『峠の雪・剣の舞』だけだったりする。あと今妹子がヒストリエ読了してよくわかんねって言ってました。がーん。

*1:文庫版があるらしいのですが見たことないなー

*2:その点沙村広明は普段ストイックな妹恨(シスコン)漫画描いてるのにサラッとラブコメ描いちゃったりしてすごいヒト