救済者に押し付けられる仮面――『訪問者』

異例である。萩尾望都が6年も後に、トーマの心臓の番外編、オスカー・ライザーの幼少期を描いた『訪問者』を発表したことは、彼女のほかの作品には全く見られない異例なことである。勘がよい方はもうお気づきになっているだろうが、この作品では、私が前節で説明した、オスカー=神の構図が、よりドラスティックに、かつ残酷に示されている。彼が望んだ家の中での許される子どもになることは、『トーマの心臓』ラスト、ミュラーの養子になることが暗示され終わっている。しかしながら、彼は気づいてもらいたかったもう一人の人物に、もう一度仮面を被せられるのである。