2003-12-30から1日間の記事一覧

まとめ

『トーマの心臓』で行われた、オスカーへの神の仮面の押し付けは、残酷な神が支配するでもう一度繰り返され、克服されている。また、面倒なので書かなかったが、それはエリックとバレンタインの関係にも共通している。神の性格と愛の性格についてはまたいつ…

救済者の救済――『残酷な神が支配する』

「使えないオスカー」とイアンのことを例えたバカがいた*1。ところがどうであろう?イアンがもしオスカーのように、自分を抑えて相手のことをひたすら思い続けていたなら?それこそ、『トーマの心臓』の二の舞である。 『トーマの心臓』で出来なかった救済者…

救済者に押し付けられる仮面――『訪問者』

異例である。萩尾望都が6年も後に、トーマの心臓の番外編、オスカー・ライザーの幼少期を描いた『訪問者』を発表したことは、彼女のほかの作品には全く見られない異例なことである。勘がよい方はもうお気づきになっているだろうが、この作品では、私が前節で…

なぜオスカーは置き去りにされるのか?『トーマの心臓』のラスト

実は作品中、オスカーはこのラストを見ぬいている。 「トーマ・ヴェルナーに負けそうなんだ…… ユーリの頭から彼を消せないんだ…… ぼくはユーリの手のうちはみんな見ぬいててなにもかも知ってるのに ――ぼくがいちばんユーリを理解できるのに ジョーカーも持た…

なぜユリスモールは神学校へいったのか?『トーマの心臓』の違和感

オスカーは「ぱふ」1979年7月号の漫画キャラクター投票においてエドガー(ポーの一族)を抑えて1位になったという、やたらと人気があるキャラクターである。ただし、『トーマの心臓』においてのオスカーの位置は、主人公ユリスモール(ユーリ)、そして死ん…

はじめに

ユリスモールはなぜ神学校に行ったのだろうか? 『トーマの心臓』を読んだ後、私たちの心に残る余韻、そしてやるせなさの原因であるひとつの疑問。その疑問が『トーマの心臓』を名作たらしめているとすら言うことが出来る、と私は感じている。しかし、『訪問…

序の序・萩尾望都作品における救済者の性格

以前予告したミニ論文の序の序、前提です。1/2いちお完成 萩尾望都『トーマの心臓』『訪問者』既読を前提として話を進めています。未読者は決してこの先を読まないことをオススメします。これから私は『トーマの心臓』についてかなり偏った意見を表明します…