『魔人探偵脳噛ネウロ』を真剣に大絶賛してみるか

魔人探偵脳噛ネウロ 6 (ジャンプコミックス)

魔人探偵脳噛ネウロ 6 (ジャンプコミックス)

おお、ちゃんと1日後には表紙が来ている。感心なことです。
五月大好きなのになんだか働いてばっかで全然更新しませんでしたよ! ここ「五月の庭」なのに。でも気分はいつでも五月。そして今年の五月は雨ばっかで五月じゃなかった。私の五月はどこにあるの。


それでも、全国に四散するネウロ信者の端くれとして、ネウロ6巻が発売されたのをきっかけに勇気を出して(?)更新してみます。今年の収穫といえばモリエサトシ松井優征の新人コンビに尽きます。今回の折り返しコメントで「この巻からの話は1年ぐらいで連載が終わりそうなら最終回前に持ってくる予定だった流れです。有り難いことにその心配が無かったので、山場の一つとして描かせて頂きました」と言っているっていうことは、掲載順は三途の川を越えたり戻ったりだけど、その割に打ち切りの心配も無いっていうことなのかな。ジャンプを後ろのほうから読むのは松井の所為です。


さて、最初はドーピングコンソメスープだヒステリアだデイビッド・ライスだと色モノ・ネタとして扱っていた『魔人探偵脳噛ネウロ』ですが、5巻でなんだか盛り上がりに欠ける〈豹変しない〉犯人を描いたことで逆に私の中での評価が高まりました。そもそも上とか下とかいう話なのに、「巨大な力」=ネウロの身勝手さに振り回される事を選択する、奴隷=弥子・吾代という関係が面白い。普通の漫画でやったらおかしな力関係であることは間違いなしなのに、この漫画だと何故か納得できます。人の下につくのは悪いことで、独立独歩でいくべきだという私のよくわからない思い込みが瓦解。


ただそれは5巻から始まったことでは全然なくって、よくよく考えてみたらネウロはいつだってそうだったのです。
・ファミレス吐血編(ネタ)
・弥子父編(シリアス)
・シュプリームS編(ネタ)
・アヤ・エイジア編(シリアス)
・魔界探偵事務所編(ネタ)
・X編(シリアス)
・ヒステリア編(ネタ)
・旅館殺人編(ネタ)
・早乙女総合調査編(シリアス)
・噛み切り美容師編(ネタ)
・絵石家編(シリアス)
・バレ放火魔編(ネタ)
・バレ予想:春川編(予想:シリアス)
とざっとこんな感じで、ヒステリア→旅館殺人編のコンボ以外には見事にネタ【軽い・短い・豹変度合大・ストレートにブッ飛びすぎ】なものと、シリアス【重め・長め・豹変度合少・なんかメッセージがあるっぽい感じ】なものが続けて展開されるようになっています(一応犯人バレを防ぐために通常呼ばれる名前とは違った事件名で呼んでいます)。現在の本誌ではまたヘンテコ犯行が行われていますが、その裏には伏線まで貼って登場させたあのキャラが妖しく笑っていたりするわけで。このシフトがとっても上手いと思っていて、『デスノート』みたいに際どいものを扱っていてモノローグ主体でガーガー理詰めで話す作品を、「ネタ」的に消費するという楽しみ方は思いの他多いです。ネウロはまず「ネタ」から入って心を掴んだところで、理詰めであることから脱却し、その上で、得た読者に何かしらメッセージを伝えようとしている。その“掴み”が劇的に上手くって、すっかり騙されました。テラシロタ。


さらに、最近赤マルとWJに掲載された魔人探偵脳噛ネウロ読みきりを読んで、割と作者は意図的にそれらを組み合わせているんだなぁと思いました。赤マルの方はわりとネタ的な豹変モノでしたが、やっぱり吾代との関係につながる上下の話がある。ジャンプの方はそれはそれは露骨で、なんてったってネウロさんが弥子に「大好きだぞ」って言うシーンがありますからね! 満面の笑みで!振り返り様に! だぞってお前キャラ違ってんぞと*1


それに、キャラクターを描き込んでいくことをより熱心にやりだしたのも5巻くらいからだと思っている。今巻で弥子の成長はまだまだだと解ったしね。その5巻を読んで、吾代とかどうでもいいと思っていたのに大好きになり、あかねちゃんも最初に出てきたときは「髪なんてキャラ立ちするわけねーじゃん」とか思っていたのに今巻で大好きになってしまって、まさにネウロの手の上で踊らされる表紙のジャガー笛吹と後藤筑紫のよう。


そんでもってその肝心のメッセージなのだけど、それが直球ど真ん中ストレートなのが微笑ましい。要は「人間ってサイコー、可能性の塊」ってな感じ。ネウロさん的には、人間の悪意が強大であるからこそ、人は進化し、もっと残忍で手の込んだ犯行をする、よって究極の謎を食べられるウマー、そして我が輩は謎の千年帝国を築くのだフハハって感じになっていますが、それは多分松井のテレ隠しです。もちろん本気で人間の薄汚い部分が好きなんだというのは作品を読んでいてしみじみ感じますが(冨樫も同じく)、だからってひねくれてその本質を見過ごすようなことだけはしたくない。人間の闇を愛する者のひとりとして。

と、割と正統派な感じで誉めてみましたが、ネタとしても美術・芸術漫画としてもなんだかんだいって面白いのでした。表紙がネかねちゃんじゃなかったので猛烈に怒った1冊。次は記念すべき七巻なんだから、777ッ道具でも出してください。



小ネタ

・人気投票での「間違いなく1回も登場していないキャラ」は中野博之と貼りつキンの様子。貼りつキンのダミーっぷりは手がこんでる。
・脳みそボーン♪の楽譜、2/4は4/4の間違い。シロタ編の脅迫状に比べれば可愛いミスか。
・「肌色の写真」、別の絵だという説もあるけど、個人的には多分コレじゃないかと思っているのだけど……。そっくりだから。パ……参考元をあっさり明かす松井が好き。そして弥子の意見に涙するネウロさんにしろ、今週あたりの吾代さんにしろ、みんな泣きすぎ。
・やっぱり構図がかなり普通になってきてしまっている印象。噛み切り美容師inエレベーターと、「期待外れだヤコよ 貴様の日付はいつになったら変わるのだ?」のところくらいしか印象に残りませんでした。がーんーばーれー

*1:ええと正しくは「魔界の人間に比べて地上の人間ははるかに狡猾で残虐で悪意に満ちている。だからヤコよ、我が輩は貴様らが大好きだぞ」です。