漫画の感想を死ぬほど書きたいと思います

えーっと他の感想日記さんに倣って今回は★つけて評価してみようかなと思います。最大は★7こで。他、今読み途中なのは昴(継続)、寄生獣(面白い…)、イズァローン伝説、SUGER、原獣文書などなど。購入したけど読んでいないモノも多し。読まなくちゃ。

ふたつのスピカ 1〜5(最新刊)柳沼行 ★★★★★☆☆

小学生の時、私は天文学者になりたかった。毎晩ベランダに出て夜空を眺めたり、ベッドに入る前に木星の衛星の名前を暗誦したり。その頃はまだ木星の衛星は16個だということになっていた。メティスアドラステアアマルテアテーベ、イオエウロパガニメデカリストレダヒマリアリシテアエララ、アンナケカルメパシファエシノーペ。こうやって四つずつ区切って覚えたりしていた。それが今や、「1999年代に17個目の衛星(S/1999J1)が発見されてから、2000年と2001年に11個づつ、2002年に1個、更に2003年(1〜3月)には12個の衛星が発見されている。 この結果、木星は太陽系では際立って多い衛星の持主となった」とのこと。歳はとりたくないね。(日本惑星協会
そんな若い頃の宇宙への情熱を持ち続ける事の出来た少年少女たちに少しばかり嫉妬を覚えました。物語は良く出来ていて、ジーンと心に染み渡る感じ。宇宙への思いに共感して涙したり。それ以上に私は「もうひとつのスピカ」が好きで、ここまで真っ直ぐな感受性を持った作者さんだから、こういう物語が描けたんだろうと思う。ストレートに心に響く良作。

イヴの眠り 吉田秋生 1巻 ★★★★★★☆

なんか……表紙のアリサが頭でっかちに見えるのは気のせいですか?
物語はまだまだ序盤。しかも後日譚「魂送り」と、ケン・クロサキ元中尉とルー・メイの出会いを描く「ハウメアの娘」があるからイヴ〜本編は二話しか入っていないという。今のうちに夜叉を読み返せと、そういうことですね吉田さん。読みます、読ませていただきます。
というのも、私は最近の吉田秋生さんについて否定的な意見を何度も何度も述べてきたのだけど、これが「魂送り」そして「ハウメアの娘」の二編でかなり解決されたんです。具体的には、吉田さんの描く「家庭」と、セクシャリティの問題の飛躍についていけなかったのですね。この二編がとても良い。
「魂送り」では、母の受容がひとつのテーマになっていて、アリサという娘が生まれることで、夜叉という作品全体がもう一度再生していくのがなんとも心地よい。そして「ハウメア〜」でのルー・メイは正に叶小夜子の進化系で、「トラウマに泥まない」というのは正にこのことを言うんだと思う。人を殺す(能力を持つ)ことでしかそれを体現できないのは問題かも知れないけれど。
イヴ〜は夜叉の完全なる続編なので、まず夜叉から読むことをオススメします。ラストのページに人物紹介が載っていて、「光の庭」の暁と、シン・スウ・リンの結婚式の様子が載っている。結婚式の頃はまだカッコいいんだがなぁ。
以下、吉田秋生について触れた文。

  1. id:lepantoh:20031120(吉田秋生作品の劣化、ACテーマからの離脱)
  2. id:lepantoh:20031217#p2(吉田スレ@少女漫画板の視点、女性性忌避、犯されたい欲望、性器を持った身体)
  3. id:lepantoh:20031215(24年組→性器を持った身体→チンポついた女?)
  4. id:lepantoh:20031216(BANANA FISHの構造分析・支配に対する抵抗)
  5. id:lepantoh:20031231(年末のアレ)
  6. id:lepantoh:20040106#p2(吉田秋生作品ととトラウマ)

ゴールデン・ライラック 萩尾望都 ★★★☆☆☆☆

何だまだ読んでなかったのかよって感じですが、好きな作家さんの作品全部よんじゃうと悲しくなりません?私はダメ。生きる希望が持てなくなってしまう。というわけで萩尾さんも「とってもしあわせモトちゃん」と「ケーキ ケーキ ケーキ」とこれは読んでいないのですよ。吉田さんも「きつねのよめいり」読んでないし。
なのに読んじゃった。どうしよう。そんな感じです。前半部分の少女と少年が分化していく表現なんかは、萩尾さんだな〜。70〜84年ごろまでの萩尾望都の歌うようなモノローグは最高。

昴 曽田正人 1〜5(第一部完、以下続刊) ★★★★★★★

ナムラさんにオススメされて読んだんですが、もう面白いこと面白いこと。実は少女漫画読みのクセにあまりバレエ漫画が好きでないのだけど、すまし顔で踊っている内面ドロドロとかドキドキのバレエ漫画より、こういうバレエ漫画が読みたかったんだ!ついでだから言っちゃえば、「天才」漫画もあまり好きではない。NARUTOで飽き飽きしちゃうクチ。でもこれは痛快!主人公が天才過ぎて周りと上手くいかない様や、それをはねのけて成功していく様がもうものっ凄いパワーで描かれてる。100万馬力。さらに言ってしまえばぶっちゃけ「シャカリキ」はダメだったけど、これはOK!毎日本屋によって、二巻ずつ買わないと先が気になって仕方がない。

ケチャップマヨネーズ いくえみ綾 ★★★★★★☆

表題作は雑誌で既読だったんだけど、忘れかけてきたので購入。この人はどうしてこう、感情のひだとでも言うべきものを捉えられるのだろう。中期までの萩尾望都もそうだけど、その繊細すぎる鋭敏すぎる感覚が恐ろしいです。短編三篇を収録。

  • ケチャップマヨネーズ……やらしいタイトルだけど内容は幽霊とぼくの思い出って感じ。凄いとしか言いようがない。タイトルの秀逸さは読めば解る。読まなきゃ解らない。
  • 水の春…若いなぁ。思春期のトキメキの裏には猛烈なまでの諦めと冷めが待機しているのだ。
  • アイスクリーム チョコレート…茅野キタ――!!「ハニバニ!」二巻収録の「ラブレター」にも登場する茅野が出ていてビックリ。あいかわらずいいキャラだ。日本昔話のような顔をしているのだ。素敵だ。

バジリスク せがわまさき+山田風太郎 1〜3(最新刊)★★★★★★☆

「ジャンプから背伸びしたい工房が読んで面白いって言いたがるマンガ」、と罵られて?いるのを見て、むしろ読みたくなる私。しかも面白いし。背伸びしちゃったぜオイラ!
何が素敵って、まず絵と見せ方がウマい。主人公・弦之助の瞳術、何度読み返しても身震いしてしまう。適度にグロテスク。そしてキャラが素敵。夜叉丸と蛍火のカップリングなんて狙いすぎですよ!そして、如月左衛門。ヤバイですこの人。超ツボ。ドツボ。ああ素敵。2巻の最後の「ニタァァアァ」って笑いがたまらん。普段ニコニコしてる人が冷酷な表情を見せるのがたまらん。お胡夷とのアレがたまらん。あと変身した後に妙に性格が弱気になっていたり、さっき聞いたばっかりの「人別帖」に反応してしまったりとさりげなく漂う小物感にやられます。と思ったら3巻では意外と腕が立つことも判明。ああ素敵。
忍・淫・殺ってポップは上手いと思ったよ。その通り!

イズァローン伝説 竹宮惠子 文庫全9巻 ★★★★☆☆☆

大まかなストーリーは「デビルマン」「寄生獣」と同じ構図で、魔がヒトを廃そうとする様子を描いたもの。魔の頂点に君臨する「魔王」ティオキアは両性体で、しかも元・ヒトだった。ティオキアの中で魔との葛藤が繰り広げられ、ついに弟・イズァローン王ルキシュと相対する――といったもの。
うーん。途中までは竹宮作品のなかで一番好きだと思ったんだけど……どうも竹宮さんの長編作品って、話が破綻している感じを受ける。まずキャラクターの位置があまりにコロコロ変わりすぎ。重要そうな人物がどうでも良くなったり、その逆も。人物の肉付けが、BASARAなんかに比べて薄すぎる気がする。フレイアもどっちつかずだし、ルキシュ王ですら。それが人間らしさ、といわれればそうかも知れないけれど。
最大の原因は魔王ティオキアが、魔と葛藤しているんだけど、その葛藤の様子がわかり難過ぎること。自分でもようワカランうちに魔に操られているから、ティオキアの人格は行ったり来たり、娼婦的と純真と悪魔的と、何考えているんだかサッパリわからない。「感情移入」して読むタイプの私にはもうサッパリです。長すぎるのも難。最後の方など、ティオキア何回死んでるんですか?同じ展開ばかりで頭が混乱します。
それでも、もう一人の主人公、ルキシュ王の、フレイアに対するストイックな恋愛描写はとても良かった。森で一度だけ会った少女に恋をしたまま、顔も知らぬ相手と政略結婚するのだけど、それがその少女だった。ルキシュ王は驚き、喜ぶんだけど、婚約者と引き話されたフレイアは徹底的にルキシュを拒絶する。

たとえ民衆に向けられたつくりものの笑みでも
それがわたしをこれほどまでに喜ばせると
どうやって伝えたら――

その感情の新鮮さ、美しさなんかはホント、上手いなぁ。アスランとパイヴァ編に通じるものがある。あと、この頃の竹宮さんの描く輪郭は本当に綺麗。頬に丸みがあって、だけど知的でキリッとしている。そのフレイアも、王妃として知的で美しくて、なまじっか魅力的だったために、婚約者アスナベルとの間をフラフラしているのが段々鼻につくように。「天ない」の晃もそうだけど、魅力的なキャラクターがそういうことをしていると、本当にイライラするんだよなぁ。