2003-12-31から1日間の記事一覧

終・少年は子宮になりうるか

カルノ・グィノーは魂の免疫不全の悪魔喰いという設定である。人は簡単に他者と交じり合ったりしない。ただし、カルノは魂の免疫不全であるために、他者の魂と簡単に融合する。そして魔物にとって受肉するということは魅力的なことであるため、カルノは魔物…

8、母性からの脱出と母になる少年

大塚英二が「としての少年」という論文を書いていたと知った時、かなり凹んだものだ。また先を越された、と思ったのである。しかしながら、私は現在2003年に生きていて、少女漫画は更なる進化を遂げていた。よって同様の題材で文章を書いても、また違ったも…

7、テーマの逆転――「少年魔法士」

少年魔法士は、今までのテーマを「逆転」させた漫画である。 同じ「異端児」を描いた漫画でも、萩尾望都の作品において、永遠を担当するのは「少年」の役割であった。全てを失ってもなお生き続けるバンパネラ・エドガーに、死ねない少年エルグ、そして殺され…

6、性器を持った少年が母性と対立するとき

性器と持つ少年によって美化される母性。それを打ち砕いたのがなるしまゆりだった。『少年魔法士』の主要登場人物、レヴィ・ディブランは虚弱体質で神聖騎士団の最高祭司、しかも金髪碧眼の美男子という、なんとなく中性的なキャラクターとして描かれている…

5、性器を持った少年は父性と対立する?

さて、ここで一旦萩尾望都と吉田秋生の話に戻りたい。そもそも彼女達の根底には、女性性、母性の忌避があるという話を私は1、萩尾望都で触れたが、実は吉田秋生作品において、母親と対立するという構図は殆ど取られない。大体が父性との対立の物語である。萩…

4、なるしまゆり

実は、私はどうも吉田秋生の周辺や後継の人々を見つけ出せないでいる。それはただ単に私の読書不足に起因するのもあるのだが、サブカルのなかのサブカルのなかで(少女漫画の支流のなかで)、とりわけ岡崎京子的なものがググイと持ち上がってきたからかなぁ…

3、萩尾望都と吉田秋生

ここで注目したいのは、それが萩尾望都と根底で通じているということである。例えばユリスモールがサイフリートにうけた折檻や、エドガーが大老に受けた儀式とといった、ある種の美化が施された虐待の構図を、吉田秋生は(彼女の特性である)性というファク…

2、吉田秋生

吉田秋生は作品の中に大島弓子を引用したり、竹宮恵子や萩尾望都を盗用!?したり、とにかく彼女の根底には、24年組が流れていることは間違いない。しかしながら、彼女はその無性的・脱少女漫画的な絵柄と話の設定において、24年組から大きく一歩を踏み出し…

1、萩尾望都

そもそも少年は、私が知る限り少女のメタファーとして登場した。勃起する性器を持たない少年は、内面は少女であった。少年を使うことのメリットは、ご本人が「ある程度年齢を経ると、世の中の男女の役割分担を心理の中にインプットされてしまって、そこから…

今年ネットを騒がせた二つの事件。長崎の12歳の少年は、「男は女になれると。あっこ(注・あそこ)なくなったら、女になれると言われて、ボクも同じことされそうになったもん。」と言った。ゴスロリ少女は、「生まれ変わったら何に成りたい?その理由は?」…

目次

ネタバレを予告なく多分に含みますのでご了承ください 序 テーマ、動機 1、萩尾望都 24年組の少年について 2、吉田秋生 吉田秋生の少年とその変化 3、萩尾望都と吉田秋生 二人の作品においての死、異端、そして非少女の比較 4、なるしまゆり 萩尾望都との共…