考察

2、「反抗」対象としての父と「戦闘」の発生

拙稿『メッシュ精読』での定義をもう一度持ち出させていただくなら、自らの役割を押し付けようとして反発を引き起こす父親との軋轢が「反抗」であり、これは大抵「戦闘」を伴う。また主人公の〈主体のようなもの〉はその戦闘においてのみ見え隠れする――とい…

評論の記法について

〈山かっこ〉で囲まれた言葉は役割を示します。漫画内のジェンダー・ロールと言い換えても可です。 〈少女〉〈非少女〉〈不確定な自己〉〈白痴〉〈支配する父〉〈封印する母〉などといった使われ方をすると思います。 「かぎかっこ」で囲まれた言葉は、普通…

少年愛

『メッシュ』以降崩壊するもののひとつ。『ニューヨーク・ニューヨーク』で主人公のケインがパートナーのメル(共に男性)についてこう語る場面がある。 同性愛を神への冒涜と考える者もいる 俺の母親は…神聖なものを何よりも重んじる 俺は熱心なクリスチャン…

ギムナジウム幻想*1

24年組の一つの特徴として語られるもの。木原敏江『摩利と新吾』に最も強く見られる*1。代表作は萩尾望都『トーマの心臓』『11月のギムナジウム』『ポーの一族』、竹宮惠子『風と木の詩』など。 狭くはギムナジウムそのものを描いた「ギムナジウムもの」と言…

〈母〉の死/〈母〉の愛の喪失

『トーマの心臓』におけるエーリクとオスカーの母、『ポーの一族』のエドガー『風と木の詩』におけるセルジュとジルベールの母、『摩利と新吾』における摩利・新吾は母を実際に亡くしている。初期萩尾望都もしくは24年組においての〈母殺し〉は多く指摘され…

〈少女〉と〈非少女〉

宮迫千鶴の『超少女へ』で指摘された萩尾望都作品内の性(ジェンダー)とでも言うべきもの。少女漫画を読む上で非常に良い指針となる偉大な発明。定義がとても簡潔で良い。 〈少女〉……〈認識行為〉と〈主体性〉を封印し、繭にこもって王子様を待つ少女 〈非…

少女漫画の1970年代――『メッシュ』以前

一般的に語られる「24年組らしい」と思われる要素は以下のものを基準にしていることが多いのではないでしょうか?そして、それを古き良き少女漫画と思っている人も多いのでは。しかし、それはすべて『メッシュ』で覆されています。少女漫画の1980年代を振り…

メッシュのラスト――「殺したといいますか生かしたといいますか」とレヴィは言う

メッシュは〈他者の欲望の鏡〉としての存在を母親の前に差し出し、それを選択するのはメッシュ自身ではなく母だった。そのことで、〈選択権〉とでもいうべき〈自主性〉を「喪失」してしまうことがラストに暗示されている。メッシュは母の再婚相手から、父サ…

父の殺人という自己肯定、母による肯定のための自死

【画像3】を見ていただければわかるように、メッシュは自分を一度は否定し、その後もう一度認めたともいえる父に対して殺意を剥き出しにするのに対し、自分を捨てた母への憧憬のようなものを口にする。一方、殺人に失敗したメッシュ【画像1】は、死んでも…

他者の欲望を写す鏡、メッシュ、ことフランソワーズ

作中でメッシュは美少年として描かれており、幾度も女装をする。性別の間を自由に揺れ動くメッシュのイメージは著しく不安定で、全11話中ミロンのエピソードを除けば全てである10話で「他人の欲望するイメージを被せられている」。ここで、エピソードのおさ…

少女漫画の80年代――『メッシュ』を精読する 何故父親を殺さなければ/母親に殺されなければならないのか?

あいつを殺せたらあとはどうなってもいいんだ あと自分が狂おうが死のうがあいつさえいなくなればいいんだ あいるがいる限りオレは人間にはなれないんだ 一生あいつにおしつぶされるづけるんだ(『メッシュ』vol.1 p111) 【画像1】 萩尾望都作品は80年におい…

急に思いついた  抑圧者のいない異端児を如何にして救うかという問題

少年魔法士について、『蛆虫と蝸牛』(……あ、蛞だったかも*1)を書く書くといいながら結局書いていないのだけど、今日ふっと閃いたのでメモ。 わたしはレヴィ(少年魔法士)とゼーン(原獣文書)とあぎと(不死者あぎと)が好きなんだけど、彼らをひと括りに…

結局そういうふうにしか人と関われない人びと、というナイフ

で作品を切り取れないか。と急に思い立ったので、それから急遽上を考えたのだった。 それが、突然のひらめきで、「そういうふうにしか人と関われない人かどうか」になってもいいのではないか、と思ったわけである。 そういわれてまず思い浮かぶのがゼーンだ…

ジェンダー最後の逆襲

昨日の夜なんかドラマやってたみたいですね。ま、寝過ごしたんですけど。テレビなんて、大嫌いですから、起きてても三回目の少林サッカーを見ていたと思うな。ワンダフルライフ。 と思ったらid:hizzz:20050109さまのエントリを発見。予断ですが私も前自分の…

イヴの眠り 吉田秋生 2巻&3巻

イヴの眠り―YASHA NEXT GENERATION (3) (flowersフラワーコミックス)作者: 吉田秋生出版社/メーカー: 小学館発売日: 2004/12/20メディア: コミック クリック: 3回この商品を含むブログ (38件) を見る3巻面白いです。オススメ。 やっぱり吉田秋生はこうくるか…

漫画まとめ

それにしても、あまりに久しぶりなため、何がなんだかわからない感想なので簡単に自分的少女漫画観を纏めてみます。 少女漫画に多大なる影響を与え、少女漫画の手塚治虫と呼ばれるのは萩尾望都ですが、私は彼女の本質は、〈少女〉からの脱出だと考えています…

少年魔法士12 アエトニキ事変

少年魔法士 (12) (Wings comics)作者: なるしまゆり出版社/メーカー: 新書館発売日: 2004/09/25メディア: コミック クリック: 6回この商品を含むブログ (15件) を見るすみませんさぼってて。 英語用別宅を開設したのでこんどはこちらも本分に戻ろうと思いま…

今回の選挙結果をまともに受け止めるために

とりあえず日本の記事ばっか読んでちゃだめ(笑)だというのが大前提。何度も言ってますけど町山さんのところばっかよんでたらそれはそれで洗脳されますよ。まぁ、2ちゃんで洗脳されるよりいいですけど。 Election results 数字が客観的だなんていうつもり…

『オペラ座の怪人』ストーリーと軽い考察

さて。ストーリーは至って明確。ぶっちゃけ『ノートルダムのせむし男』と大して変わらない(身も蓋もない)。私に言わせれば、バレエよりはいくらかマシだが、オペラに比べてミュージカルのストーリーなど、それこそディズニー以下のゴミである。そんなもの…

『オペラ座の怪人』The Phantom of the Opera

折角なのでこれを書いておこう。 正直、これを書いてしまったら今月残りなにも書かなくていいんじゃないかというくらい自分にとっては重大なトピックである。ネタばれを含むのでその点は気をつけていただきたいが、はっきりいって未だ未見の人々にも是非読ん…

toroneiさんへ

id:toronei:20040611#yawa でまた取り上げていただきました。 プラネテスの無垢考察はあとりさんが引き続き考えてくださって、私がカヴァーできなかったグスコーブドリ関係も含めた書評、そして最近の『無垢の力』を種本にした考察があります。とても面白い…

自由への招待と拘束の正体

L’Arc〜en〜Cielのニューシングル『自由への招待』ASIN:B0001ZX9D4たよ皆さん。ダイハツのMOVE CUSTOMのCM曲です知らない人のために言っとくと。復活してから三連続小川シングルと、ラルクは大事な何かを切り捨ててしまった気もしますが、SMILEの中にも他に…

放浪息子が酷いの事について。

Not A Serious Wound.さん こういう世界観って、嵌まりたての腐女子が陥りがちな「腐女子によるゲイ差別」そのものなんですが。「美形にあらずばゲイにあらず」みたいな感じの。 実は世界観自体はそうなのに、ちゃんと「男女を入れ替えた劇をしたい」って言…

TG出来ぬ者の権利はないのか〜放浪息子 志村貴子

ネタバレしまくりです ISBN:4757715226 これは酷い。相当に酷い。ネットでは評判の良い志村氏の作品だが、どこがいいのかさっぱりわからない。 主人公は小学五年の転校生で、おとなしくまるで女の子のような少年。隣の席の少女、高槻さんと仲良くなるが、あ…

その5.抜け出さない男

さて、漸くメッタ切りする前に白状することがあります。わたくし、HYDEのソロを殆ど追っておりません。というかアルバムは家に二枚ともありますが、聞けないのですよ…。そんな中で一つだけ気になる歌はシングル曲のShallow Sleep*1。この曲は聴いた瞬間まずA…

その4.抜け切れない体、飛び出す翼

さてそんな超認識の下に作成されているREALですが、そこにもまだhydeの人間らしい感情を読み取ることは出来ます。すいません調子に乗りました。結局の話飛び出す歌がお好きな方もいらっしゃると思うので、好き嫌いの話はナシで。REALの中にも閉じ系な歌はあ…

あとがき・引き止める女

うーん例えばShallow Sleepには「そっと目を開けて辺りを眺めても風景画は There is no colour A courless landscape」という歌詞があるので、その辺とも絡めることが出来るのかもしれませんが、私の力量では無理でした。 SMILEの中にあるREVELATIONという曲…

瞳の住人をメッタ切りして解体する試み・壱のさわやかなまとめ

なんてったってメッタ切りですから。前置きが長いとかそういうこと言わないでください、長すぎて収拾つかなくなって2日にわけて書いてやる気もなくなって早く24見たいのは事実ですけれども、誉められたので書きますよ!これじゃあまだまだ痴話喧嘩の刃傷沙汰…

その2、閉じた世界に押し込められた男

でその閉じ系が復活後THE GOHST IN MY ROOMになると思うんだけど、この歌詞は重要なのでちゃんと引用してみる。 窓に今日も君を探す/目がくらむような太陽/抜け出せたならばこの手に入れよう he says! steal your love/解き放つドアに振りかえることはな…

瞳の住人をメッタ切りして解体する試み〜その1・閉じた世界にいる男

瞳の住人…瞳の住人…どう考えてもタイトルは変。でも畜生いい曲じゃねーかぁ。ちなみにイロメロの着ムービーのCMの歌です知らない人のためにゆっとくと。 閉塞感とか閉鎖空間とか密室とか閉じた世界とか11人いる!とかそういう単語を聞くとなんだか興奮してく…